多くの日本企業も注目する「店頭体験」の革新技術

 ここからは、シリコンバレーおよび北米における小売の最先端事例を紹介していきます。

 この分野を分類すると、大きく【店頭体験・店舗】向け、【オンラインマーケットプレイス】、【D2C】の3つに分けられます。今回は、この3分類の中で我々が注目する技術やサービスをピックアップしてみました。

【店頭体験・店舗】
■ RetailNext(リテールネクスト)

 2007年に米Cisco Systemsのエンジニアたちによって設立されたRetailNextは、史上初の「小売専門IoTプラットフォーム」として、リアルな実店舗の分析サービスを開発しています。

 仕組みとしては、まず大手メーカーが提供する高度なアナログカメラやIPカメラを駆使して店舗内の人の動きを詳細に把握。買い物客の性別や年齢、新規顧客かどうか、リピート頻度、動線、最終的な購入商品などの情報を収集し、収益とどのような関係性があるかを分析しています。2018年1月には、世界で初めてディープラーニングを利用したAI内蔵のIoTセンサー「Aurora v2」を発表し、話題を呼んでいます。

 同社の最終目標は、これまでEC企業がやっていたような顧客分析を、リアルな実店舗でもできるようにすること。そのためには、既存の小売プレーヤーが構築しているCRMやPOSシステムと、どのように(どこまで)つなげることができるか? が次の課題になるでしょう。とはいえ現時点でも多くの実店舗に導入されており、日本でも有名百貨店や下着メーカー、アウトドアメーカーなどが利用しています(吉川)。

すでに日本語版もあるRetailNextのWebサイト

■ Percolata(ペルコラータ)

 2011年に設立された「ピープルアナリティクス」の会社で、日本の人材大手であるパーソルホールディングスが出資したことでも知られています。

 同社のシステムは、実店舗の顧客の数、商品購入率、商品を見た回数、店員から離れた回数など詳細な顧客データを収集し、それと従業員のシフト情報を組み合わせた分析を行うことができます。店舗の来客数予測や従業員のスケジュール調整など、さまざまなサービスを提供していますが、特に従業員のシフト最適化や店舗内での理想的な配置を分析するシチュエーションで重宝されています。パーソルが出資しているのも、この特徴があるためです(田端氏)。

■ Plexure(プレクシュア)

 2010年設立のスタートアップで、オンライン決済サービスを提供しながら利用者に対するロイヤリティプログラムを実施。ポイントを貯めるなどのサービスを受けることができる、いわば「アプリ版のTポイント」です。

 また、ポイント提供のみならず事前決済でピック&ゴー(アプリ経由で注文と決済を済ませてから店舗に行き、すぐに商品を受け取って帰ること)できる仕組みづくりにも注力しており、2018年にリリースされた日本マクドナルドの専用アプリも同社の仕組みを利用しているようです(田端氏)。

■ Omnyway(オムニウェイ)

 Omnywayはアプリを活用した小売店店頭での決済モジュールを開発。レジでのQRコードを使用したスマホ決済システムや、店頭で商品のバーコードを読み取ってその場で決済する「セルフ決済」を提供しています。

 米Kohl's(コールズ)やMacy's(メイシーズ)、Nordstrormといった大手百貨店チェーンと提携しており、各社が進めるオンライン戦略の内容に応じてクーポンや商品割引などを提供しています(吉川)。

■ New Store(ニューストア)

 New Storeはモバイル起点の新しいショッピング体験を形にしている会社で、2018年9月時点では「Endress aisle:全店舗での在庫共有販売」「Omunichannel fulfillment:在庫/物流周りの統合システム」「Clienteling:電子カルテ」「Mobile point of sales:スマホ決済」の4つのソリューションを提供しています。

 一例を説明すると、あるブランドが好きな女性がインターネットで見つけた商品を登録しておくと、移動中に「近くに販売店がありますよ」とプッシュ通知が来るわけです。それを見て実際に店舗へ行く際は、お店の販売員にも「○○さんが来ます、在庫を準備しておいてください」というメッセージが飛び、試着の準備などを進めておくことができます。かつ、販売員は、過去の購入履歴などを電子カルテでチェックできるので、別のアイテムを推薦するなどパーソナライズされた接客ができるのです。

 同社のシステムはAPIを通じて他のシステムにつなぐこともできるため、今後は欲しいアイテムをオンラインで購入したら、在庫のあるお店からUberのようなライドシェアサービスのドライバーが商品をピックアップして、指定の場所に配送してくれるようなこともできるかもしれません。いろんな発展形が考えられるサービスです(田端氏)。

New Storeが作ろうとしているショッピング体験は、同社のWebサイトで動画として紹介されている

■ Standard Cognition(スタンダード・コグニション)

 2017年に設立されたばかりのスタートアップで、店舗内で顧客が持っている商品をカメラでリアルタイム追跡し、顧客がレジ前に立つと一瞬で商品の合計額が表示されるシステムを提供しています。加えて、顧客の嗜好や購買習慣を把握し、それに応じて店舗棚に置く商品をカスタマイズするためのマーケティングシステムや、万引き行為の摘出など3つのサービスを提供する予定で、2018年7月時点での資金調達額は総額$11.2 Million(11億2000万円)となっています(田端氏)。