Amazon Goに見る「店舗イノベーション」の未来形

 続いて、いまや世界的な小売プレーヤーとなったAmazonの取り組みを紹介していきましょう。前段で、オンラインのみならずオフラインでも積極的に次の一手を打っていることに触れましたが、ここでは日本でも大きな話題となった無人コンビニ「Amazon Go」(アマゾン・ゴー)の説明も含めて詳細を掘り下げていきます。

シバタ:Amazonは次々に新たな施策を打ち出す企業として知られていますが、ここでは直近で気になった3つの動きを紹介します。

 まずは、先ほども少し触れた2017年のWhole Foods Market買収です。$13.7 Billion(約1兆3700億円)という巨額の買収によって、Whole Foods Marketの生鮮食品が「Amazon Prime Now」の販売対象となり、Prime会員なら2時間以内にWhole Foodsブランドの食料品を自宅に届けてもらうことも可能になりました。

 そして、2018年1月には無人コンビニ「Amazon Go」が米シアトルで開業。さらに同年6月にはオンライン薬局のPillPack(ピルパック)を$1 Billion(約1000億円)で買収して医療分野への進出も果たしています。

吉川:2017年と2018年の2年間だけでも、非常に大きな買収やエポックメイキングな取り組みが3つもあるってすごい話ですね。

シバタ:Whole Foods Marketの買収やAmazon Goに比べると、日本であまり話題になっていないようですが、PillPackの買収もかなりインパクトがありましたよね。

 アメリカは医療費がとにかく高いので、日本みたいに気軽に病院へ行って薬をもらうのが難しいという人もいます。それで市販薬を買う機会が多くなるわけですが、Amazonで買えるとなればとても便利です。それに、1日に複数の薬を飲まなければならない人向けに、1回で飲む分を「小分け」にして配送するようなサービスも行っています。

吉川:Amazonはこういうオペレーションをしっかりやりますよね。Amazon Goも、構想発表からちょうど1年くらいできっちり仕上げて開業している。田端さんは実際にシアトルの1号店に行ったそうですが、どんな感じでした?

田端:ものすごく感動しました。皆さんにもぜひ一度体験してほしいです。まず「レジを通す必要がない」って、こんなに気持ちいい買い物体験なのかと。もうご存知の方も多いと思いますが、Amazon Goは入店前に専用アプリをダウンロードして、入口のコード読み取りゲートでQRコードをスキャンして入店したら、後は商品をカバンに入れて帰るだけ。退店時にゲートを通過する際に自動で決済が行われます。これは本当にすごい体験でした。

シアトルにあるAmazon Goの1号店(撮影は田端氏)

 私たちがAmazon Goに行った時、Amazonの社員にもご同行いただいて、その方は「何でも好きなように試してください」と言っていました。(カメラに写らないように)顔を隠して商品を手に取る、手をカバンで隠しながら商品を取る、同じチョコレートを2枚重ねにしてカバンに入れる、そんなことをいろいろ試しながら買い物してみたのですが、退店時にはちゃんと買ったことになっている。カメラやセンサーの精度があそこまで高いと、もう万引きはできないでしょうね。

 そのカメラやセンサーはお店の至るところに付いていて、天井はもう要塞のようです。ご同行していただいたAmazon社員の話だと、数千個のカメラ&センサーが取り付けてあるそうです。

Amazon Goの天井(撮影は田端氏)

吉川:カメラやセンサーは、専用のものではなく既製品を使っているとのことですが、実際そうなのですか?

田端:はい、既製品だそうです。

シバタ:とはいえ、これだけのカメラやセンサーを取り付けるだけで、アルバイトを雇うよりお金がかかるでしょうね。

田端:間違いなくそうだと思います。当日は技術に詳しい仲間も一緒に行ったのですが、彼いわく「専用のアルゴリズムを開発するエンジニアの採用費やサーバー代、GPU代など全部ひっくるめたら、Amazon Goを1店舗作るだけで100億円~1000億円単位の設備投資が必要になるんじゃないか」とのことです。金額は、見学した際の所感でしかありませんが。

シバタ:でも、2店舗目、3店舗目を出店する頃にはもっとコストダウンする方法を見つけていそうですね。

田端:ええ。次の店舗ができた時、カメラやセンサーがどれだけ減っているかが、個人的に最も注目しているところです。

 後、日本では「無人コンビニ」と呼ばれているので店員が1人もいないというイメージを持たれますが、実際にはAmazon Goでもたくさんの店員さんが働いています。商品補充をしている人から、お店の中でお弁当を作る店員さんなど、それなりの人数が働いているんです。これは余談としてお伝えしておきます(笑)。