Alesca Lifeの取り組みに学ぶ、AgriTechの可能性

 講座の最後は、今回のゲストである小田氏がCEOを務めるAlesca Life Technologies(以下、Alesca Life)の取り組みを通じて、AgriTech企業が成長していく上での戦略やマーケット特性について伺ってみました。

シバタ:まずはAlesca Lifeの事業内容から説明をお願いします。

小田:はい。我々は北京を拠点に「コンテナ式植物工場」を展開するスタートアップで、どこでも農作物を育てられるコンテナ・室内システムを提供することで室内農業の実現を目指しています。

Alesca Lifeのコンテナ式植物工場(写真は同社Webサイトより)

 野菜の水耕栽培ができる我々のコンテナはどこにでも置くことができ、クラウドに接続して施設内の温度、湿度、照明などを制御することが可能になっています。栽培時における環境モニタリング・デバイスやオペレーション管理のデータ化ツールまで、すべてのプロダクトを自社開発しているのも特徴です。

シバタ:なぜコンテナを活用した室内農業にフォーカスしたのですか?

小田:コンテナって、実は全世界でだいたい1200万台くらいが利用されていない状態で放置されているんです。中国の港にも膨大な数のコンテナが積み上がっているので安価で購入することができますし、場合によっては無料でもらえる。まずはこれを有効活用できないかと。

 コンテナは動かしやすいという利点がありますし、事業コンセプトとして「コンテナ式植物工場」というのは分かりやすいので、スタンダードの一つにできるのではと考えました。

 ただ、最近はコンテナ以外に、地下駐車場のような地下施設に植物工場を作ることも始めています。これには北京のような都市部ならではの理由があって、DiDi(滴滴出行)のようなライドシェアサービスが普及したことで、クルマを持たない人、持っているけど乗らない人が増えているんですね。それで、北京ほどの大都市でも、駐車場に空きができ始めている。

 これはホテルのような場所でも顕在化している問題で、かつ、彼らは提供する食材のクオリティにも気を配っています。そこでAlesca Lifeが空きスペースを有効活用しながら高品質な野菜を提供することで、新しい付加価値を提供できるようにもなります。そういう文脈で、「北京マリオットホテルノースイースト」や「ザ ウェスティン北京朝陽」のような高級ホテルも顧客となっています。

シバタ:面白いですね。

小田:ただ、おかげさまで一定の知名度を得たため、偽のAlesca野菜および商品を販売しようとしているところも過去に出てきまして。そこも中国らしいというか。

シバタ:対応はどうされたのですか?

小田:当社は前述した通り、植物工場のオペレーションとサプライチェーンマネジメントに用いるデバイスやシステムを自社開発してきたので、そこで得たモニタリングデータなどをきちんと顧客に渡すようにしており、偽の商品とすぐ区別できるようにしています。

Alesca Lifeが開発したプロダクトやツール

 例えば3カ月に1度、場合によっては1カ月に1度、Alesca野菜の安全性について詳細なレポートを出すことで、「このレベルの情報開示ができるのはAlesca Lifeしかない」とご理解いただけるようになったんです。こういう環境の中で、Alesca Lifeの社員がこういうプロセスで野菜を生産しました、だからクオリティを確保できるんですと丁寧に説明していけば、信用されるというか。

シバタ:情報開示も価値の一つになるということですね。素晴らしい。今後の展開はどうお考えですか?

小田:食品安全性の問題、もしくは農作物の生産力に問題を抱えている地域は世界中にたくさんあるので、今後は中国で培ったノウハウを活用しながら新興国に展開していきたいと考えています。直近だと中東とアフリカ、具体的にはUAE(アラブ首長国連邦)と南アフリカ共和国に進出し始めています。

吉川:前回の講座で、「インドア農業」を展開している米Plenty(プレンティ)に孫正義氏のソフトバンク・ビジョン・ファンドやアマゾン創業者のジェフ・ベゾスといった投資家が2億ドル(約200億円)の投資をしたという話をしたのですが、国家や大手企業がAgriTechに注目することで、大きな金額が動くようになっていますよね。

シバタ:農業のお話からデータに関するお話まで、ありがとうございました。