サービス利用が「個人の信用度」を決める中国の裏事情

 ここからは、中国におけるFinTech・InsurTech分野の最先端スタートアップを紹介していきます。

 この分野は、【送金・決済】【融資・資金調達】【投資・資産運用】【保険】【仮想通貨・ブロックチェーン】の5つに分類することができます。この5分野の中で我々が注目する企業をいくつかピックアップしてみました。

【融資・資金調達】

■ Zhima Credit(ジーマ・クレジット)

 中国語では「芝麻信用」と書くZhima Creditは、セサミ・クレジットとも呼ばれる「信用スコア」を取り扱う個人信用評価システムです。

Zhima CreditのWebサイト

 これは、個人や中小企業がAlibaba Groupのサービスを利用した際の取引記録や政府のオープンデータベース(公共料金の支払い記録、学歴など)などを基に、ビッグデータ分析でスコアリング。算出される「信用スコア」が高くなればなるほど、良いサービスを受けることができるという仕組みです。規律の押し付けではなく、「便益」をインセンティブとした道徳システムの構築ができると、中国政府も後押ししています。

 開発元であるAnt Financialは、もともと「銀行口座を持てなかったような若者や低所得者層にも金融サービスの恩恵を提供する」という思想で生まれています。だからAnt=蟻(あり)という名前が付けられており、セサミ・クレジットの「セサミ」もゴマという意味。「小さくてもみんなが集まれば大きな力になる」という思想の表れです。

 ただ、中国の「みんな」というのは、人口を考えても膨大な数になる。この膨大な人数を、従来型の金融機関のやり方で格付けするのは非常に難しいということもあって、「信用スコア」のような仕組みが普及したのだと見ています。最近では、お見合いサービスや合コンのような場でも「信用スコア」が重視されるということで、いよいよ市井に広まってきたと感じます(絵美氏)。

 

■ Mybank(マイバンク)

 こちらもAlibaba系のオンライン銀行で、中国語では「網商銀行」と書きます。2015年に設立された零細事業者や農家への融資にフォーカスした銀行となっており、ここにもセサミ・クレジットの概念が取り入れられている格好です。

 ユーザーがスマートフォンのアプリやブラウザから融資申請を提出すると、コンピュータが即座に融資判断をし、数分以内にAlipayのアカウントに送金されるという仕組みで、その日その日のマイクロレンディングが可能になっています。

 Tencentもウィーバンクという類似の銀行を始めていて、「信用スコア」を活用したマイクロレンディングは今後の動向が注目される分野になっています(絵美氏)。

【保険】

■ 平安(ピンアン)保険グループ

 FinTechについての全体動向の部分で紹介した平安は、中国の既存金融機関の中では最もFinTechに積極的な会社です。グループの総顧客数は4億人近くに上るため、そのビッグデータを活用してさまざまなリテール向けネット金融分野に進出しています。

 また、グループ内の4社(Lufax、OneConnect、Ping An Health、Ping An Good Doctor)がユニコーン(企業の評価額が$1 Billion=約1000億円以上で非上場のベンチャー企業)に成長。中でも健康関連のプラットフォームを提供するPing An Good Doctorは、2018年4月に$5 Billion(約5000億円)の時価評価額で上場。Peer to PeerレンディングのLufaxについても、$60 Billion(約6000億円)の時価評価額で近々香港で上場予定と言われています。

 さらにBtoB分野では、グループの共通技術プラットフォームを開発する平安テクノロジーという会社が躍進中で、ブロックチェーン技術を活用して金融機関のさまざまな問題解決に取り組む団体「R3コンソーシアム」に中国で初めて参加するなどの動きを見せています(吉川)。

【仮想通貨・ブロックチェーン】

■ Qulian(チューリアン)

 前段で、中国の仮想通貨・ブロックチェーン企業は軒並み規制によって伸び悩んでいると説明しましたが、個別に見ると元気なスタートアップも出てきています。Qulianはその1社で、2016年の創業からわずか2年で、シリーズBとして1.5 Billion元(約250億円)を調達。ユニコーンの仲間入りも間違いないと言われています。

 同社はRipple社と同じくエンタープライズ向けのブロックチェーンソリューション・プラットフォームを目指しており、すでにGoogleやMicrosoft、Intelといった米の大手企業とも業務提携を結んでブロックチェーン活用に関する共同研究を進めています。

 なお、同社の拠点は中国の杭州にあるのですが、実は杭州は今、ユニコーンの企業数で北京と上海に次いで中国国内第3位になっています。スタートアップのメッカとして杭州のステータスはどんどん上がっており、杭州政府も「ブロックチェーンで国内ナンバーワンになる」と公言しているので、今後注目の地域です(絵美氏)。