2030年、30兆円規模になる見込みの有望市場はどこ?

 前段で話題に挙がったクルマのサービス化を考える上で、今、最も近い未来だと見られているのが「自動運転×シェアリング」の組み合わせです。

 そこで、この領域ですでに動き始めているシリコンバレーのプレーヤーを紹介しながら、今後の「サービス化」が具体的にどう進んでいきそうなのかを議論しました。

木村:私が参加している「シリコンバレーD-Lab」では、自動車業界で今後の主戦場となるのは「自動運転×シェアリング」領域だと分析しています。現状、クルマを保有する人の多くが「駐車場に寝かせたまま」になっていますし、この無駄を減らしてカーシェアリングを促進しようという動きと、自動運転技術との相性はとても良いからです。

シリコンバレーD-Labが独自分析した「自動車業界の変革の構図」

 ただし、「自動運転×シェアリング」の領域に進出する時のポイントが一つあって。上図のように、個人所有の延長線上ではなく、どちらかというとカーシェアリングの延長線上でサービスを作るというアプローチをしなければならないという点です。

シバタ:ユーザーにいかに利用してもらうかがカギを握るから、ですよね。

木村:その通りです。そして、カーシェアリングサービスでは、今のところ自動車メーカーよりもUberや米LyftのようなITスタートアップが先行しています。なので、自動車メーカー側から見ると、どことタッグを組むか? が重要になってくるわけです。

シバタ:先ほど話に出たGMのCruise Automation買収が、まさにその証拠ですね。

木村:ええ。彼らはすでに、サンフランシスコで自動運転を使った社員向けライドシェアサービス「Robo Taxi(ロボタクシー)」の提供を始めています。

 ちなみに、金融大手ゴールドマン・サックスの調査によると、Robo Taxiがシェアリング事業の収益規模を拡大し、現状5000億円の収益規模を2030年には30兆円に押し上げると予想しています。ドライバーもいないため、営業利益率も非常に良く、既存の自動車メーカーの営業利益率を大きく超えると予想されているので、GMはここで復活への道を探ろうとしているのです。

 他にも、例えば米Chariotというライドシェア・スタートアップは、サンフランシスコやシアトル、オースティンなどの都市で自動運転車によるルート便を始めています。彼らは各地域で新しい公共交通機関のような役割を担っているんです。

シバタ:Chariotは、2016年にFord Motorの関連会社であるFord Smart Mobilityが買収したんですよね? 彼らがやっていることは、普通のバスと何が違うんでしょうか?

木村:普通のバスとは運行ルートの決め方が決定的に違います。Chariotはアプリを通じてユーザーから運行経路の投票を募り、その投票結果に応じてオンデマンドで走行ルートを変えているんですね。バスの時刻表とルートが毎日変わっていくみたいな感じです。

 モビリティのサービス展開に際しては、今まで議論してきた効率性の観点に加え、交通の安全性の観点からも、地域ごとの事情を十分に考慮することが重要なんですよね。

 シリコンバレーの中心部にあるサンノゼ市が「ビジョン・ゼロ」という市内の交通事故をゼロにするための運動をやっているのですが、そのために現地のスタートアップと積極的に協業しているんですね。これは、事故率の高い道がすでに分かっているので、後は技術の力で事故を減らすことができるだろうという目論見があってこそ可能な施策で。そういう意味でも、「自動運転×シェアリング」の普及には、地域特性を踏まえた打ち手が必要なんだと思います。