生き残るため、スタートアップとの連携急ぐ大企業

 自動車メーカーがこぞって取り組む自動運転やMaaSの開発は、数多くのテクノロジースタートアップによって支えられている――。この現状をより深く理解していただくために、次は大手メーカー各社がどんな動きをしているのか、主に企業買収・提携のトピックスを紹介していきます。

シバタ:自動車メーカーがソフトウェアの開発会社を買収したり、連携する動きが年々強まっていますが、木村さんの印象に残っているのはどんな案件ですか?

木村:自動運転技術のスタートアップである米Cruise Automationを、2016年に米ゼネラルモーターズ(以下、GM)が買収したのが一番の衝撃でした。買収額は非公開ながら、推定$1 Billion(約1000億円)規模だったと報道されています。GMはこの買収劇を皮切りにして、どんどんサービスレイヤーに軸足を移しています。

 一方で、私はシェアリングサービスに関連するテクノロジー企業にも注目しています。BMWが2016年からアメリカで始めた「ReachNow」というカーシェアリング事業があって、これを支えているのは2014年に出資した米Ridecell(ライドセル)というスタートアップの開発したMaaSプラットフォームなんですね。

 これ以外にも、米Chryslerが米Googleの自動運転会社Waymoと組んで無人のライドシェアサービスをやろうとしていますし、イスラエル版Uberと呼ばれるGettは、独Volkswagen Groupから$300 Million(約300億円)を資金調達し、2017年にはニューヨークなどで広まっていた同業の米Junoを買収しています。

シバタ:僕はコネクテッドカー関連、中でもV2Xとテレマティクス関連のスタートアップへの投資も盛り上がっていると感じているのですが、どうでしょう?

木村:確かにそうですね。

吉川:V2Xとは「Vehicle-to-everything」の略で、クルマが通信技術によってすべてのモノとつながっていくという意味です。

 時系列で説明すると、自動車が交通情報や天気の情報をインターネット経由でリアルタイムに取得するようになったのが、テレマティクスと呼ばれる分野の始まりです。その後、車車間通信、路車間通信、個人の持つスマートフォンとの通信など、さまざまな対象とつながる技術が発展しました。そうやって膨大な情報を集めながら、ドライバーをサポートしてきた流れの最新形が、V2Xになります。

 これには通信分野の技術革新も欠かせないので、ITベンダーやソフトバンクのような通信事業者、米IntelやNVIDIAといった半導体メーカーも絡んできます。つまり、自動車メーカーはこれまでのように「メーカーとサプライヤー」の関係性で技術開発を行うのではなく、今後は「メーカーとサプライヤーとITサービスベンダー」の3社間で次世代モビリティ開発に取り組む必要があるということです。

 なぜなら、コネクテッドカーやMaaSが当たり前という時代になると、「クルマを保有する人たち」より「クルマを利用する人たち」のほうが多くなるから。この「利用」の入り口となるIT・通信分野を押さえなければ、自動車メーカーはこれまでのような儲けを出せなくなります。収入のメインが「クルマの販売」から「サービス提供」にシフトしていくわけですからね。

シバタ:日本メーカーの中で、この変化に最も危機感を持っているのがトヨタじゃないかと思っています。実際、トヨタはこれまで紹介してきたNautoやUber、MaaS Globalなどに何らかの形で出資していますし、他の自動車関連スタートアップとも全方位型で連携を進めています。

吉川:自動車メーカーは今後、「クルマを売って終わり」では生きていけなくなります。その点、トヨタの(ソフトウェア開発スタートアップへの)張り方、真剣度というのは、シリコンバレーでも際立っている。業界最大手がこうした変化を先取りしようとしているのはすごいことです。