中国のIT御三家「BAT」が人類を進化させる?

Baiduの「Apollo」プロジェクトの紹介ページには、J・F・ケネディの名言が引用されている。その理由とは?

 国による方針決め、そして人材獲得。「AI大国」になるための地固めを着々と進めている中国では今、具体的にどんな取り組みが行われているのでしょう。

 ここからは、中国でIT御三家と呼ばれる「BAT」(Baidu、Alibaba、Tencent3社の頭文字を取った造語)の動きを中心に紹介していきます。

シバタ:Baiduは2016年、AI投資を主とした$200 Million(約200億円)のファンド「Baidu Ventures」を立ち上げ、成熟期のスタートアップへの投資を目的とした$3.1 Billion(約3100億円)のファンド「Baidu Capital」も組成しています。さらに2018年4月には、$500 Million(約500億円)のAI特化型ファンド「Changcheng Investment Partners」を立ち上げました。

 Alibabaも、2017年10月に「今後3年間でAIや半導体関連の研究開発費として1000億元(約1兆7000億円)超を投入する」と発表しています。

 Tencentは2社のような動きを見せていないものの、中国のロボティクス・スタートアップUBTECHが行った$40 Million(約40億円)の資金調達や、AIの導入を図るインドの配車サービスOlaの$1.1 Billion(約1100億円)の資金調達で、リード役となっていました。AI関連企業への投資を積極的に進めている印象です。

吉川:Tencentは、自動運転技術にも張っておく目的で、2017年に電気自動車の開発で知られる米Teslaにも出資しました。今ではシリコンバレーで投資をしているプレーヤーたちと、ほぼ変わらない存在感を持ち始めています。

シバタ:Baiduも、2017年以降は国内外のAIスタートアップを数多く買収・投資していますね。ただ、彼らの場合は、Tencentとは違った事情があるようです。業績が好調なTencentやAlibabaに比べると、やや苦しんでいるので。AIに大きな投資をすることで復活を狙っているような印象を受けます。

吉川:石黒さんが冒頭で話していたBaiduの自動運転車向けのプラットフォーム「Apollo」開発プロジェクトなども、その復活に向けた一手だと思いますよ。そして、このプロジェクトにはBaiduの気概のようなものも感じます。

 「Apollo」というプロジェクト名は、米NASAによる人類初の月への有人宇宙飛行計画だった「アポロ計画」にちなんでいて、ソフトウェア開発プラットフォームのGitHubで公開しているソースコードの「README.md」(開発に参加するエンジニアに最低限読んでほしい項目をまとめたページ)には、当時のJ・F・ケネディ米大統領が語ったアポロ計画の抱負がそのまま引用してあるんですね。

 「我々は今後10年以内に人類を月に送る。なぜならそれは簡単ではなく、非常に困難なチャレンジだからだ」みたいな。この名言を引用している時点で、非常に志が高いわけです。「これは人類全体にとってのチャレンジなんだ」という思いが伝わってきます。

 僕たち日本人は、中国企業のやっていることを色眼鏡で見てしまう傾向がありますが、実は人類の発展のため本気でAI分野の研究開発を進めているんだと。そう考えると、我々も襟を正す必要があるなと感じます。