本格活用に向けて「今、最も重要な取り組み」とは

最後に、我々3人が2018年時点のAIができること・できないことを私見を交えて議論した内容をご紹介しましょう。議論のポイントは以下(図表)で、それぞれの見立てを「◎ 今すぐできる」「〇 2~3年以内にできそう」「▲ 5年かかっても難しそう」で示しています。

 ここでは、各項目の可能性について議論した後、総括で出てきた内容をご紹介します。

前田:僕がこの議論全体を通じて感じたのは、AIによってリアルな世界、アナログな世界が劇的に変わるのはもう少し先で、まずは裏側の部分で技術の浸透が進むと感じます。

 今はインターネットを通じてさまざまなデータが集まっていて、それに対してAIがものすごいパワーで分析をかけている真っ最中。今後数年は、そこから人間にはできなかった発見、結果を導くというフェーズではないかと思うんです。

 そこでしっかり結果を出すスタートアップが出てきて、大手企業に買収されたりIPO(株式公開)しながら、そこで活躍した人たちがAIを違う分野に広めていく。そういう流れで社会が変わっていくとするなら、今はその手前の段階、つまりデータの整備・解析のような渋くて泥くさい部分でAIを活用するフェーズだと感じます。

吉川:そういう意味では、AIの発展・普及にも、携帯電話やインターネットの歴史と似たような面があるのかもしれません。

 初めて携帯電話が登場した1991年、当時は「携帯電話は何に使うの?」「家からかければいいじゃん」という反応が少なくありませんでした。その時は携帯電話が今のように広まって、カメラが付くなんてことを誰も想像できなかったわけです。インターネットも、誕生した当時は同じようなものでした。

シバタ:そのお話から考えると、インターネットが登場して今までにもう20年近くがたっています。一方で、ディープラーニングを前提にした現在のAI技術が登場したのは2012年くらい。まだ6年しかたっていません。なので、前田さんがおっしゃるように、議論してきた「AIのできること・できないこと」は、もしかすると楽観的過ぎたかもしれませんね。

吉川:ただ、90年代のインターネット黎明期は、動画を観たいと思っても(通信回線の問題で)例えば1994年のローリングストーンズのネットライブ(世界初)は私のパソコンの画面では1ビットも動かなかった。でも、AIは、ここにきてかなり動いていますよね? だから、AIがさまざまな産業に影響をもたらすようになるまでは、ネットの歴史よりも短い期間で済む可能性はあります。

 ここから先の進化を早めるには、作り手側の想像力が大事になります。今は裏側で起きているイノベーションを注視しながら、AI活用の次の一手を考えていく姿勢が求められる。それを続けられる人や企業が、いざAIが本格的に普及してきた時、世の中を変える側にいるのだと思います。