日本企業に期待される意外な役割

 こうした大企業の「AIシフト」は、採用市場のみならずエコシステム(産業を取り巻く環境、生態系のこと)にも大きな影響を与えています。その象徴的な動きの一つが、半導体の開発競争です。

シバタ:個人的には、半導体メーカーのNVIDIAがすごいと思っています。いまや同社のGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)がなければディープラーニングができないというような状況になっているので。どうでしょう?

吉川:確かにすごいですね。僕は1999年からシリコンバレーに来ているのですが、当時のNVIDIAはパソコンや携帯のGPUメーカーであって、そこからAI分野に進出するなんて想像もつきませんでした。

 NVIDIAのGPUは最初にMicrosoftのゲーム機に搭載されて、その後ソニーのプレイステーションシリーズや任天堂のゲーム機にも搭載されるようになりました。NVIDIAの売り上げの約5割は、ゲーム業界から来ているんです。

 今後、自動車業界などにも普及していきそうですが、2018年時点ではまだ売り上げの10%くらいしかありません。このあたりでどれだけシェアを伸ばせるかが今後を左右するでしょう。

前田:半導体周りについては、NVIDIA以外にも、Googleがディープラーニング専用プロセッサ「Tensor Processing Unit(TPU)」を開発していたり、Intelが自動運転技術で知られるイスラエルの会社Mobileye(モービルアイ)を買収したりと、いろんな動きがあります。日本の半導体メーカーにも、ぜひ頑張ってほしいところです。

 ちょうどこの間、データガバナンスの整備に取り組んでいる会社の社長とお会いした際、面白い話が出てきました。今後、自動運転車を含めていろんなデバイスに搭載されるAIチップの開発では、データのプライバシーやガバナンスについても考えなければいけないと。

 その時、「チップの信用性」という観点でいえば、やはり日本のメーカーに一日の長があるはずだから頑張ってほしいんだと言っていました。日本の半導体メーカーには、そういう視点で期待がかけられているのか!と驚きました。