総額650億円…熾烈さを増す人材獲得競争

 他に大きな課題を挙げるとすれば、「開発における人材確保の難しさ」は、今シリコンバレーで非常にホットな話題になっています。大手企業がこぞってデータサイエンティストやAI関連技術者の獲得に乗り出しており、採用にかける費用も高騰しているからです。

前田:ある調査によると、IT産業の世界トップ20社がAI関連技術者を雇用するのにかけている年間費用は総額で$650 Million(約650億円)にも上っているそうです。Amazonくらいになると、1000を超えるAI関連職務で人材を募集していて、年間で$227.8 Million(約227億円)もの予算を準備していると報道されていました。

シバタ:すごいですよね。あまりに人が採れないから、近年はタレント・アクイジション(タレント人材獲得)を目的とした有望スタートアップの買収も目立ちます。

吉川:その流れが顕著になってきたのは、2012年、Appleが音声アシスタント機能を開発していたSiriを買収したあたりからだと思います。当時のシリコンバレーでは「え、なぜSiriを買ったの?」という感じだったのですが、あれから3~4年の間にAI技術を持つ企業に一気に注目が集まり出した。

シバタ:そうですね。あの有名な囲碁AI「AlphaGo」を開発した英DeepMindをGoogleが買収したのも2014年でした。

前田:そういった人材獲得の努力が実り始めるのは、2019年くらいからではないかと思っています。AIを使ったアプリケーションが「本当に成果につながるもの」として市場に認知され始めるのはこれからだと。

吉川:2018年5月に行われたGoogleの開発者向け会議「Google I/O 2018」で発表されたデモを見ても、AIを活用した機能がたくさん紹介されていて、まさにそんな印象でした。

 例えば、スマートスピーカーやスマートフォンに搭載されているGoogleのAIアシスタント「Googleアシスタント」が、人間と会話しながら美容院の予約を取ってくれるデモ映像がありましたよね。新機能のGoogle Duplexが話しているところなんて、コンピュータが相手とは思えないレベルでした。しかも、すごく滑らかに会話しながら、カレンダーの空いている時間を探して自分の代わりに予約をしてくれる。

「Google I/O 2018」でGoogle Duplexのデモを行っている様子。動画は以下URL( https://www.youtube.com/watch?v=D5VN56jQMWM )

前田:あれはすごかったですね。僕も感動しました。

吉川:AIの進化でああいう世界がもう目の前に来ているんだと、未来を感じました。