順風満帆時の隙を見逃すな

流選手が岩出監督から学んだことはたくさんあると思うのですが、社会人となったいまでも役に立っていることを、重要な順に4つくらい教えてもらえないでしょうか?

:本当にたくさんあって4つどころではないんですが、1つは、マインドのつくり方をすごく学べたと思います。人生のなかで、いろいろな壁に突き当たり、いやなことも悔しいこともあり、諦めそうになることもあります。その時にどういうマインドを持つかで、そのあとの自分の成長と周りへの影響が変わるということを学びました。

 帝京大学ラグビー部の夏合宿は菅平で行い、最後に他大学との練習試合で締めくくります。試合前日は厳しい練習をせず、最後にタックルをして、士気を上げて試合に向かうというサイクルでした。その時、僕の中では「いい雰囲気になっている」と思っていたんですが、監督に呼ばれて、「チームがぬるいことに気付いていないのか」と指摘を受けました。僕がまったく気付いていないところを指摘していただいて、自分のなかでハッとなって、未熟だなと痛感させられました。監督は僕に怒ったわけではありません。「これからその状況をどう変えていけるかが、キャプテンとして大事なところだぞ」と言われたのをいまでも覚えています。

 その時はすごく悔しかったですね。僕はチームのことをちゃんとわかっていると思っていましたから。けれども監督に「レベルに達していない」と見抜かれ、僕はキャプテンとして未熟だったことを思い知らされました。ただ、監督の指摘とアドバイスを聞いてから、僕も自分のスタンダードを上げましたし、周りに対してのスタンダードも上げました。みんなにも要求する分、自分がまずはやらないといけないですし、チームメンバーみんなの協力が必要でした。帝京にはAチームからEチームまでありますが、各チームのリーダーとよく話し合い、チームを支えてほしいとその時の思いを素直に口に出したところ、4年生を中心にすごく賛同してくれてチームの結束は固くなり、さらにラグビーも強くなっていったと思います。

岩出:心の状態の話ですから、私の指摘が正しかったかどうかはわからないけれど、満足とか妥協とか、人間には、本来持っている実力を全部出さない性質があります。普通にやっていると、やっぱりぬるくなってしまうんですよ。おそらく、これくらいやっておけば、翌日の練習試合には勝てると相手の力量を査定して、安心していたんだと思います。

 安心感がある状態というのは、よさそうでよくない。隙がたくさんできてしまう。当時は、転ばぬ先の杖で、先回りして指示をしていましたが、いまだったら、そのまま何も言わずに試合をさせて、隙や油断を体験してもらってから、自分たちで気付いて変わってもらうようにしていたと思います。