コミュニケーションのスピードを高めるSBAR

岩出:3人トークは、上級生が質問をつかって下級生の考えをうまく聞き出しながら、考え方を整理させて、発言させていく。それを積み重ねることで、下級生に自分の考えをしっかり持ってもらうことが狙いですが、どちらかというと受け身的な方法です。下級生がより能動的に、自分の考えを自分で整理できるように、昨年から選手にSBAR(エスバー)を使ってもらっています。

 SというのはSituation(状況)、BはBackground(背景)、AはAssessment(評価)、RはRecommendation(提案)。たとえばケガをして、トレーナーに報告する時のことを想像してみてください。状況(S)と背景(B)をまず整理し、次の評価(A)で自分なりの見立てをして、最後の提案(R)で何をすべきかについての考えを表明する。選手がそこまでできるようになると、相談を受けたトレーナーが、正しい判断をより早く下せるようなる。以前は、SとBをトレーナーに伝えることはできても、それ以降の判断は相手に丸投げ状態でした。つまり、上級生やトレーナーが主体的になるやり方でしたが、それを少し進化させて、下級生にもっと主体的に自分の考えを持ってほしいということで始めました。下級生に自律性を身につけてもらうためのアプローチです。

 食事に例えると、「おかあさん、今日の夕ご飯は何なの?」ではなくて、自分で栄養学やフィジカルの知識をつけて「こういうのを食べていこう」と考え、実践することです。サントリーでもぜひ使ってください。

:はい(笑)。

岩出:SBARに慣れてくると、頭が整理されてくるので、コミュニケーションのスピードアップにつながります。想定外の事態に陥っても具体的な対応策をすばやく考え、手を打てるようになっていく。もともとSBARというのは、医療の救急現場で、看護師と医師のコミュニケーション迅速化ツールとしても使われているんですよ。医療現場は一秒一刻を争う場。どうやったら素早く正しい判断を下せるかが求められているので。

:ラグビーとは関係のない他業界で使われているツールを、いいと思ったらぱっと取り入れるというのも、岩出監督のすごさです。周りからターゲットにされるなかで勝ち続けるというのは非常に難しいことです。自分たちの成長が止まった時点で衰退が始まってしまうので、いままで築いたものを大事にしつつも、何か新しいことを取り入れていかないと、成長の度合いは一定になってしまう。新しいひらめきやアイデアは単なる思いつきではなく、監督が根拠を持って、ご自身の経験に照らし、じっくり検証されたうえで取り入れているんです。そういうイノベーションは、チームの進化には不可欠ですし、勝ち続けるチームに必ず求められるものだと思います。

(下編に続く)