帝京大ラグビーの強さの秘訣は、ラグビー以外のところにある

:ほかの大学は帝京大学に勝つために、帝京のラグビーをすごく研究して、戦術や戦略を練っているのですが、帝京の強さは、目指しているゴールが他校とは違うという点が大きいと思います。ほかの大学は、ラグビーの試合で帝京大学に勝つことをターゲットにしているのに対して、帝京大学は、ラグビーで勝つよりも大切なことがあり、それをしっかりやらなければならないと岩出監督から教わった。ラグビーで勝つことよりも大切なことというのは、社会に出て活躍し、自分や自分の周りの人を幸せにできるような人材になることです。4年間の大学生活を通して、それを目標に人として成長する。そういった大きなビジョンのなかにラグビーがあるという考え方でやっていました。選手も、人間的に成長できているという実感を持てるので、そこから生まれる精神的な余裕が、実際にラグビーにも反映されていると思います。

 明治大学との決勝戦の後半、同点トライを決めたシーンでは、創造的なプレーがいくつも連続して起きて得点につながったのですが、あのトライは逆境のなかでも焦ることなく、一人ひとりの選手が考えることをやめなかった帝京大学が、明治大学を上回った。心理的な成長と、一人ひとりが常に考え続け、選手間で瞬時に意思疎通できること。そのあたりが、ほかの大学とはいまでも違う。そこが強い理由だと思っています。

岩出 雅之(いわで・まさゆき)氏
帝京大学ラグビー部監督、帝京大学スポーツ医科学センター教授。1958年和歌山県新宮市生まれ。1980年日本体育大学卒業。大学時代、ラグビー部でフランカーとして活躍し、1978年度全国大学ラグビーフットボール選手権大会で優勝の原動力になり、翌年度、主将を務めた。教員となり、滋賀県教育委員会、公立中学、高校に勤務後、1996年より帝京大学ラグビー部監督。2009年度全国大学ラグビーフットボール選手権大会で初優勝。以来、9連覇を継続中。著書に『常勝集団のプリンシプル』(日経BP社)がある。

誰かの指示を待つのではなく、自分で考える習慣が身についているんですね。

:それはトレーニングの成果なんです。帝京大ラグビー部には「3人トーク」と呼ばれるミニミーティングがあり、練習中でも試合中でも頻繁に行います。例えば、練習中に何かミスがあったとき、いまの状況がどうなっていて、それを修正するにはどうすればいいか、ぱっと3人ひと組になって話し合います。その際、必ず上級生と下級生が入るようにして、上級生が下級生に質問をして答えてもらうという形式をとるので、選手は1年生の頃から考える習慣が身につく。同点トライとなったプレーの起点となったのは、当時1年生の北村選手でした。1年生のときから創造的なプレーがしかも大舞台で出せるというのは、普段の練習や生活を疎かにしていないことの現れだと思います。