やりたいことをやれば、困難も苦痛にならない

岩出:なぜOODAを採用したのですか?

植木:少し手前から話すと、僕は子どもの頃から自分のやりたいことに固守して、それだけをやってきた人間です。だから、ずっと変人、奇人で生きてきた。高校生になったとき、パイロットになると決めて、そこからパイロットコースを歩み始め、57歳まで飛んでいた。その時に経営破綻があり、役員のオファーが来た。違う山に登ってやろうと自分で決断し、パイロットという山から、再建という山を登りはじめた。どれも自分の意思なくしてやったものはない。だから、楽しいんですよ。

 6年の社長業は厳しかったですよ。でも、自分でやりたくてやったんだから、努力するのは当たり前です。厳しい時間だったけれど、苦痛ではなかった。毎日のように明け方まで勉強して、翌日、社長業をしているのが楽しかった。最初の頃は厳しいことばかりだったんで、絶対にどこかで社長業を楽しんでやろうと思った。まあ、本当に楽しめたのは、最後の1、2年でしたけど、自分の好きなことばかりやってきた。それを社員にもやってほしいわけですよ。

 けれども、僕の生き方は自分で発明したものだから、他人に教えようとしても、なかなか教えられない。これまでも「二流の計画力でいいから、一流の実行力を持て」とか、「君たちは川下の砂利にしか僕には見えない、もっと上流にあったごつごつした大きい岩だったんじゃないのか。もう一回、そこに戻ろうよ」とか、社員にメッセージは出してきました。でも、一つひとつは何となくわかるんだけど、体系的ではなかったので、「結局、植木さんは何を言いたいのか」みたいな反応が返ってきました。

 そんな時、ある人からOODAというのを知っていますかと聞かれた。その人から話を15分聞いて、「この人、いつ僕から盗んだのか」と思うくらい、それまで自分が言ってきたことを反映した考え方で、あとで聞いたら、米空軍パイロットの行動様式をもとにしているという。それで、OODAを入れようということになった。

具体的にOODAの何がいいのか、教えてください。

植木:「四の五の言う前にやってみなはれ」というところですね。社員への評価がマイナス査定になっている会社が多いじゃないですか。うちにもまだそういうところがあるけれど、「おもしろい失敗をしたな」と言って加点する会社にしないとだめですよ。変わり者の社長の僕が、「会社人間なんかになるな」「やりたいことやってこいよ」と社員に言っていても、なかなか変わりきらないのはなぜか。やはりそういうDNAが染みこんでいるからです。いままでの自分の形を壊すのがみんな怖いから、変化には時間がかかると思います。

 僕は新しいものに出会って、既存のものが正しくないと思ったら、まず壊すことから始めます。壊したら、新しいものをつくるしかないですから。社内の規定なんて、正しいかどうかよりも、どう守るかをみんなは考えるけれど、そんなのは意味ないと僕は思っているから、「そんな規定はやめてしまえ。新しいものを考えてこい」と言ってきた。そうやって6年間、デストロイヤーとしていろんな物事を潰してきた。

 「どうしてそんなに物事を理屈で考えるんだ」とよく社員に話します。前例主義、データ主義、論理主義──それを超えたところで、物事を感性で考えろ、と。僕は経営会議で、「感性で答えを出してごらん」と言うんですよ。みんなは意味がわからないと言う。「いや、答えは理屈や数字で出すものでしょう」と信じている。でも、いつもそうやって答えを出していたら、いまの枠の外に出ることは絶対にできない。

岩出:感性で可能性が無限に広がるんですよね。植木会長のお話をうかがうと、JALさんでやろうとしているのは、単に個人の状況対応能力を高めるためのOODAではなくて、組織としてより発展していくためのOODAですね。

岩出雅之(いわで・まさゆき)氏
帝京大学ラグビー部監督、帝京大学スポーツ医科学センター教授。1958年和歌山県新宮市出身。1980年日本体育大学卒業後、教員となり、滋賀県教育委員会、公立中学、高校に勤務。1996年より帝京大学ラグビー部監督。2009年度全国大学ラグビーフットボール選手権大会で創部40年目に初優勝以来、9連覇を続けている。最新刊は『常勝集団のプリンシプル』(日経BP社)。