社員の信頼があるから自分の意志を貫ける

植木:僕は57歳までパイロットでしたから、いわば素人同然で社長になった。それなのに、自分の意志をずっと貫き、やりたいことをやってきた。「自分にそんなに自信があるんですか」とよく言われるけれど、そうじゃない。社員が自分についてきていると思っているから、自分の意志を貫けるんですよね。

 社員をほれさせようと試行錯誤しながら、社員に対するメッセージを直接的にも、間接的にもどんどん出してきた。6年たって気づいたのは、なんとまあ、入社したての社員から現場の隅々まで、僕のことをよく知ってくれているということです。3万人以上の社員に一歩ずつアプローチして、いつになったら自分のことを信頼してもらえるようになるんだろうと不安に思ったこともあったけれど、辛抱して粘り強くやっていたら、こうやって関係性が変わるんだというのがわかる。

植木さんが全国にあるJALの事業所に行くと、社員から握手してほしい、一緒に写真を撮ってほしいと行列ができると聞いていますが。

植木:それは秘書に聞いてください、自分で言うと嘘っぽくなるから(笑)。

岩出:それもコミュニケーションをとろうと地道に努力し、社員からの信頼を得ることができた結果なんですね。

植木:でも社長になって最初の頃、結構悩んでいたんです。本当にこれでいいのかなって。たとえば、写真なんかもよく一緒に写していて、「ピースしてください」とか言われてね。だけど、1年後くらいに、社内でイベント後の打ち上げがあり、みんなで写真を撮ろうとした時、ある女性社員が携帯を見せてくれたんです。その待ち受けは僕との写真だった。「1年前に写していただいて、こうやって持っています」と笑顔で言ってくれた。「こんなことで喜んでくれるんなら、俺は何のために悩んでいたのか」と思ったんですね。写真1枚撮るだけで喜んでくれるのならお安いご用ですよ。そう思ってからは、もう社員と携帯で写真を何千枚撮ったかわからない。どのステーションに行っても、僕の写真を大事に持ってくれている社員がいる。自分にとって最もうれしい瞬間です。

(下編に続く)