もちろん単に大企業勤めの方を推しているのではありません。変なプライドが抜け切れない人もいますから、注意が必要です。ただ中小企業の方が「大企業の社員は縁が遠い存在」と思っているとしたらもったいないことだと思います。積極的に探してみてはいかがでしょうか。

早め早めに手を打つ

 後継者問題は極めて重要ですから、早くから手を打つことが欠かせません。人選びの大原則は、自分と比べて秀でたものを持っている人、自分にはないものを備えている人、あるいは広い経験を持っている人、要は全体的に自分よりも上だと思える人を探すことです。間違っても、自分の“たなごころ”の中で動いてくれる御しやすい人ではとても会社は伸びてはいかないでしょう。60歳になって体力的につらくなってから後継者を考えるということでは遅すぎます。社内に適任者がいれば早くから意識も向くでしょうが、そうでなければ常に外部へ目を向けていましょう。

 仮に経営者が60歳になったとします。そこから後継者を育てても、うまくいかない場合にはまた別の候補者を育てなければいけません。それでは遅いと思います。外部から招く場合は、できるだけ早く、大企業の幹部経験者などのOBやOGらにアンテナを広げましょう。どんなに健康な人でも、いつ不測の事態が起こらないとも限りません。急に誰かに代わらざるを得ないときさえあります。「まだまだ元気」と過信せず、そのようなことも頭において動いてほしいと思います。

公共性を高める経営を

 最後に、世襲について再度触れたいと思います。

 東南アジアをはじめ、お隣の韓国も含めて、実は企業社会においても日本とはかなり違いがあります。 

 例えば韓国の巨大財閥を見ても、いまだに家族経営が多くあります。日本はこれに反して、オーナー系企業であっても成長と共に株式を公開し、公共性が増すとともにオーナー一族は後ろに下がり、3代もするとシンボル的な立場に後退している例が多いようです。文化的あるいは経営的な特徴でしょうか。韓国や他のアジアの企業とも違うように思えます。

 経営者をファミリーツリー(家系図)から輩出し成功に結び付けることは、かなり難しいと思います。仮に子供に良い教育を受けさせても、優秀な経営者になるとは限りません。自分の会社を“家業”と考えその存続だけを願うのか、あるいは“家業”から“企業”へと展開し経済社会へ存在を示すこと願うのかが、その企業の将来を占う分岐点でしょう。私は中小企業・ベンチャー企業といえども企業を成長させ、公共性のある存在になって初めて一人前に育ったと言えるのだと信じています。

 中小企業も次々と良い経営者を探し出し、企業を変化させ、成長させて次代にはぜひパブリック(公的)な存在を目指してほしいと思います。

新刊『私の中小企業論

オリックスを社員13人から大企業グループへとけん引した宮内義彦シニア・チェアマン。長年のビジネス経験を踏まえた中小・ベンチャー企業の経営者のための心得集です。本書は、中小企業やベンチャー企業の経営に焦点を当てて、その経営者が会社を成長させるためにどのようなことに気を配るべきか、どのような運営をすべきか、何を社員に任せるか。あるいはどう目標を設定すべきかなど、経営に欠かせない実践的な運営のあり方を28カ条にまとめています。会社も経営者も社員もそれぞれに成長するために組織運営の極意をぜひ学んでください。起業家志望の方にもお奨めです。