「矯正視力」と「裸眼視力」の違いを押さえておく

 そのためにはまず、視力の「良し悪し」が示す意味を知っておく必要があります。

患者さん:「先生、最近目が悪くなりました」

 このような患者さんが、昨日も来院しました。同様の相談は、診察以外のシーンでも頻繁に持ちかけられます。そんなときにまず行うのが視力検査です。

 視力検査は内科にとっての血圧や体温と同じで、眼科で最も重要な指標です。検査員が眼鏡を合わせて視力を測ります。

検査員:先生、両眼とも矯正視力は「1.2」です。

眼科医いのまた:ありがとう。じゃあ緊急性のある病気はなさそうだね。

 となった場合には、患者さんに以下のように伝えます。

眼科医いのまた:視力検査や眼底検査など眼科的検査をしたところ、大きな眼疾患は見当たらないようです。

患者さん:でも、最近モノが見えにくくて、目が疲れるんです……。

 外来で非常に多く聞かれる会話ですが、重要なポイントがあります。それは、なぜ矯正視力が「1.2」なのに、患者さんは見えにくくなったとおっしゃるのか、という点です。

 知っていただきたいのは、視力を考えるうえでは、矯正視力と裸眼視力を識別する必要があるということです。

 矯正視力とは、簡単に言えば、眼鏡やコンタクトレンズなどを装用して得た最良の視力を表します。これに対し裸眼視力とは、矯正器具を使わない裸眼の視力を指します。

 眼科医が「目が悪くなった」という表現を使う時は、「矯正視力が下がった」という意味を指します。矯正視力の低下は白内障をはじめとした眼疾患の可能性がありますので、さらに精密検査をして、原因に対して加療していく必要があります。

 これに対し、裸眼視力が悪化した場合、眼科医は「視力の低下」と認識しません。なぜならば、裸眼視力だけが下がっても、矯正すればいいからです。裸眼視力の低下の理由は、近視(近くのものが見えるが遠くのものが見えにくい)の悪化、ドライアイや加齢による老眼などが含まれますが、視力の悪化とは認識しないのです。

 このように、一般的に皆様が考える視力の低下と眼科医の認識との間には違いがあります。基本的には矯正視力が1.2あれば正常ですので、眼科医はそれ以上検査をすることはありません。逆に言えば、この時点で1.2を超えていなければ、何かしらの病気が潜んでいる可能性があります。