(前回から読む

 マーケティングの常道のひとつに「ターゲットセグメンテーション」がある。仮にうどんとそばの店に「ラーメンも自慢です」と書いてあったら食指をそそられるだろうか? 逆に「当店は手打ちそば一本勝負!」くらいこだわっているほうが魅力的だ。このように、ターゲットを定め、リソースを「集中」させることは、古来より戦いの常道でもある。敵が1000人、味方が500人だったとしても、敵が3地域に分散していれば、各個撃破できる。

 実は、人生も同じで、エネルギーの分散は避けるべきなのかもしれない。鳥越が話す。

「ある講演会で20代前半の若者に『将来何になろうか、いまいろいろ探しているからアドバイスがほしい』と言われたことがあります」

 若者は「将来この市場が伸びるよ」といった話を期待していただろう。でも、鳥越の言葉を聞いてひっくり返りそうになったに違いない。

「『いま目の前にあるものに決めたら?』と言ったんです (笑)。迷う時間ももったいないし、『本当にこれでいいんだろうか?』と考える意味なんてない。何かを選んで『これだ!』と決め、そこから広げていくことのほうが大事なんです。選択肢なんか、“なくてたくさん”なんですよ(笑)」

アームロボットがおとうふにパックをかぶせる

『私は、ここで生きていく』と決めたから生き残れる

 鳥越は、前回書いたとおり相模屋食料の看板娘と結婚した。義父・義母に「結婚式のご提案」という企画書をつくって、写真週刊誌に似せた冊子もつくった、妻に義父の写真を借り、麻雀で貴重な牌を持ってきた瞬間を描いた。手が込んでいて、ユーモアがあって、かつ有無を言わさぬ提案をするあたりが鳥越らしい。

 しかし重要なことが棚上げにもなっていた。鳥越は、相模屋を継ぐのだろうか?