「濃いめの豆乳を使えば、絶対においしい商品ができるはずだ。それに、穀物やドライフルーツに、牛乳やヨーグルトでなくおとうふをあわせれば、全部植物性の、まさに朝食向けの商品になるのに……」

 工員AとBは、二人とも大まじめだ。
 それぞれが、自分にできる範囲の努力は必死でやっているのだ。

 だからこそ、斬新なこと、本当に大切なことはAとBの狭間にある。鳥越は、臆せず人のツテを頼ってカルビーに向かい、担当者にコラボができないかと相談した。その結果が「とうふで、グラノーラ。」なのだ。

カッコつけずにどーんと行こう

 話を元に戻そう。フレッセイを巡って鳥越が得た縁は、バイヤー氏(その後、同社の社長に就任した)だけではなかった。彼はコラボ企画を実施する中、地場のおとうふメーカーにアプローチをすることになった。

 そのおとうふメーカーは社長と3人娘が切り盛りしていて、鳥越いわく、なかでも三女は「やたら元気なねーちゃん」だった。ただこの時、彼は三女に思いっきり警戒され、あとで当時の話を聞いたら「この人、ウチの財産狙ってるんじゃ……?」などと思われたらしい。

 この三女こそが彼の妻であり、この地場のおとうふメーカーが、現在、彼が社長を務めている相模屋食料だった。

 女性から、仕事上の熱意を勘違いされて警戒されれば、多少は落ち込みそうなものだが?

「いや、仕事でも恋でもカッコつけずにドーンといったら、あとは考えちゃダメですよ」

 フレッセイのバイヤー氏も、最初は「鳥越と彼女が、あまりに仲が悪くて心配した」と話している。それが、ビジネスを通して信頼を積み重ねる中で、バイヤー氏をはじめ、様々な人物が、鳥越がいかなる人間かを相模屋の社長……現在の鳥越の義父に話した。
 義父は鳥越が来てくれることを、両手を挙げて喜んでくれたと言う。

 縁。それは今の自分が準備し、未来の自分に贈るものなのかもしれない。鳥越は20代の頃、雪印の一営業に留まらなかったからこそ、フレッセイの現社長と親しくなり、相模屋の経営をする立場になり、ついには臆せずカルビーなど大企業とのコラボを実現できているのだ。

 そして“カッコつけずにドーンといく”あたりは、海千山千の大道芸人のような鳥越の「芸」なのだ、と言ったら言い過ぎだろうか。