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 東京ガールズコレクション――有名ファッションモデルが一堂に会する、国内有数規模のファッションイベントだ。2014年、この壇上に、モデルたちが意外な商品を手にして立った。

2014年の「東京ガールズコレクション」で、相模屋食料のおとうふを手に、ランウェイをモデルたちが歩いた。
©TOKYO GIRLS COLLECTION 2016 S/S
会場での相模屋のブースには、観客の若い女性が押しかけて長蛇の列に。©TOKYO GIRLS COLLECTION 2016 S/S

 なんと「おとうふ」だった。「マスカルポーネのようなナチュラルとうふ」――豆乳の脂肪分を分離できる「USS製法」(不二製油の世界特許)でつくった濃厚な豆乳をつかったおとうふだ(詳細はこちら)。

 同商品の発売元・相模屋食料の鳥越淳司社長は、ガンダムに登場する敵方のモビルスーツ「ザク」をかたどったおとうふ「ザクとうふ」のヒットで知られる人物だ(関連記事はこちら「「ザクとうふ」「ズゴックとうふ」を生んだ相模屋の真実」)。

 ナチュラルとうふ、ザクとうふにも共通して、彼のビジネスには、いつも独特の「進め方」がある。

 まず「妄想」を膨らませる。普通に考えれば、周囲が吹き出してしまうようなものが多い。好きが高じて「ガンダムのキャラクターをかたどったおとうふはつくれないか」と考えた「ザクとうふ」が代表例だが、特殊すぎて「あれは特別」と考えるところだ。

会場での相模屋のブースには、観客の若い女性が押しかけて長蛇の列に。©TOKYO GIRLS COLLECTION 2016 S/S

 しかし、よく見ると「妄想エンジン」は、鳥越社長の行動のほとんどに効いている。たとえ噴飯されようと、ありえない案であろうと、周囲に話して同志を募り、具体案を思い描く。そして「行ける!」と思ったら実現に向け突っ走るのだ。よく考えれば、同社の成長の基礎となった「第三工場」も、基本商品である絹ごし、木綿とうふで、通常の4倍という量産効率と品質を実現したい、という、鳥越社長の妄想から生まれたと言える(こちら)。

まず妄想。それが鳥越社長のやり方

 「USS製法」の豆乳でおとうふをつくろうとした時も、妄想をふくらませた。

「おとうふは健康・美容市場で注目を集めています。数多くの女性が、ダイエットのためにおとうふを召し上がっているんです。しかし問題がありました。彼女たちは、味や食感を楽しんで食べると言うより、ダイエットのためになかばガマンしておとうふを食べていたのです」

 たしかにおとうふは、そのまま食べて楽しめるものとは考えられていなかった。

 「そこで私は『濃厚な豆乳を使えば、女性向けのおとうふをつくれるのでは?』と考えました。親しくしている雑誌の記者さんに『こんなこと考えているんだけど』と相談したら、『もってこいの人がいるから紹介したい』と言ってくれたんです。Mさんという、女性向けのマーケティングのプロで、ファッションショーなどイベントの関係者とも親しい方でした」

 鳥越はM氏にこんな構想を打ち明けた。

“木綿でも絹でもない、むしろおとうふという範疇でもないものをつくってみたいんです。しかも、いままでになかった売り方をしたい。せっかく東京ガールズコレクションがあるなら、『TOKYO TOFU’S COLLECTION』なんてどうですか?”