本格的な精進料理で、肉や魚は一切ないのですが、生麩やかぼちゃなどの野菜一つ一つに深い味がちゃんと染みこんでいる。「うまい!」と声を上げたいところですが、口に出しては言えない。黙って食べなければいけないのです。食事も大事な修行だからです。見た目もうつくしいので、写真を撮りたいけれど携帯電話も持ち込めない。時間を掛けて、1個1個、作ってくれた人に感謝しながら、食事だけに集中していただく。最後に参加者に求められる感想で「お昼が一番おいしかった」と、今年も言ってしまいました…。

 まあ、私の感想は余分ですけど、座禅、そして写経にしても食事にしても「目の前のことに集中する」という体験を行える機会なのです。これは「一隅を照らす」ことにもつながっていますし、最近の流行り言葉で言えば、瞑想をベースに生まれたプログラム「マインドフルネス」にも非常に近いんじゃないでしょうか。Googleさんなども取り入れているそうですが、そもそもこれ、仏教が源流の考え方だそうですね。

 座禅に限らず、なにか今までやったことのない体験をしたり、知らない分野の話を聞いたり、本を読んだりするのは、人間性に、ということはビジネスにとっても、大変重要な肥やしだと思います(意外なおいしいものに出会うかもしれませんし)。

 人間性にはいろいろな側面がありますが、「こういう考え方、感じ方もあるのだな」という理解や、「こういうのが楽しい、嬉しい、面白い!」と、その反対に「こういうことをされると傷つく、悲しい」ということを、どれだけ感じ取れるか、大事なのはそこじゃないかと。で、それを感じる“感性”は、自分の外にしかない。

「感性」は外から得るものだと思います

 えっ、と思われますか。私だけの理解かもしれませんけど、自分の内側にあるのは「感受性」です。「感性」は自ら体験しないと身につかないと思うんです。いい映画を見る、おいしいものを食べる、劇を見て笑う泣く、などなど、自分が体験することで新しく身につく。東京ディズニーランドに行って、音楽を聴きながらボートに乗ったり、パレードを見ていると、心が穏やかになったりなんだかほっこりして「平和って大事だよね」とか、思います。それだって、体験するから感じる事が出来る。感受性という受信機に、それぞれの周波数にあった感性というアンテナをつないでいくようなイメージでしょうか。

 言い換えると、同じ仕事だけをしていては、様々な感性が身につかないことになる。視野を広げることで、自分の日々の仕事がどう目の前の人を喜ばせ、ひいては社会とつながっているのかが、自分の中で腑に落ちていく。さらには、困っている、悩んでいる人の感性も理解できるようになる。そうすれば、その人を“育てる”こともできるかもしれませんよね。

 と、このように大変ビジネス的にも重要な感性を広げるために、ディズニーランドはけっこう行くんですよ(笑)。映画も見に行くし。「シン・ゴジラ」もある人に強く勧められて見に行きまして、大変面白かったです! 温泉もいいですよね。先日は厚木の七沢温泉の美肌の湯で一日ごろんと。高尾山も紅葉の時など年に2、3回登っています。20軒近くあるお蕎麦屋さんもほぼ完食しています(笑)ミシュランガイドで三ツ星の観光地と紹介されて以来、大変混んでますが。

 若いときは1年中お店にいたこともあります。でも、けっこう昔から、休日にはどこかに行くようにしていましたね。特に、社長になってからは、「一番お客様の近くにいないと」と考え、今のお客様の感性を掴もうと、あちこちに出かけます。それを通して、けっこう新鮮な体験ができるんです。流行の場所にはやっぱり行っておきたいし、あと、歴史やお城や史跡が好きなので、フランチャイズさんのオープンがあると、それに引っかけて近くの城跡を見に行きますね。そしてもちろん、そこで地域の美味しいものを食べる。

 この間は福山で「小いか(ちぃいか)」、ホタルイカサイズの小さいイカを天ぷらで食べました。小さいのでまるごと全部食べちゃうのでちょっと苦みもあり、とても滋味深いです。そうそう、尾道から青パパイヤを「天ぷらにしてはいかが」とご提案が来て、これがまたうまい。日本中、「ご当地」には、まだまだ知らないものが多い。行くといろいろなものや味、人の感性がある。それに驚いたり喜んだりして「これはなにか仕事に活かせるかも」と考える。