じゃ、どうしたらいいのか。

 今でも注意しているのは、基本は、とにかく丁寧に説明する。「本部がこういう通達を出したから」ではまったくダメです。背景を話せる限り話し、場合によってはモノを見せたり、絵に描いたり。期限が近づいてきたら、もう一度5W1Hで具体的に説明したり、出来るだけ部下と情報と感情の共有をしていくことです。

 「君の仕事なんだからちゃんとやれ」と、上から目線で押し付けても、みんな「自分は今まで言われたことをちゃんとやっている」と思っていますから、優先度を切り替えてはくれません。「そりゃそうだ。紙やメールで、人の優先度を変えられたらどんなに楽か」と、読んでいる皆さんも思っていますよね(笑)。

 優先順位は、職位や立場によって違いがあるのはもう大前提と思うしかありません。自分と同じにしてもらうには、丁寧に、具体的に、説明を重ねるしかないと思います。できることなら時間を取り、顔を合わせて1対1で。結局、人間対人間で向かい合うのが、優先順位を合わせる最も効果的な方法です。

 「なぜ部下が自分の指示通りに動いてくれないのか」。これを実感し理解するだけでも、「降格」は効果があったと言えるかもしれません。

 ともあれ、降格して、ロイヤルホストの地区長となりました。当時、先輩から言われた言葉は、「失意泰然」。「苦しい境遇の時こそ人の値打ちは決まる。がんばれよ」と。自分自身は、うちのめされるというよりは、「この境遇で一生懸命やろう」と、思うことができました。気持ちを切り替えて、半年間で都内に4店舗、道玄坂店、高輪店、桜新町駅前店、渋谷駅東店を次々にオープンし、渋谷駅東店は契約満了で閉店となりましたが、他の3店舗は今でもロイヤルホストの売上上位店です。

 地区長は店長の直属の上司に当たるポジション。久々に現場に近いところに出られたのは、自分の気持ちにも合っていたと思います。だから頑張れたし、成果も上げられたし「うまくやっているぞ」…と思っていたら、また異動です。

 当時、福岡、名古屋、東京に3店舗を構えていた「毘沙門」という焼き肉店を、主要都市に全国展開せよ。ということでした。人事部長から「次のミッションは毘沙門を全国主要都市に50店舗くらい展開することだ。まずは東京ドームホテル店の支配人をやれ」と言われ、内心「ミッション・インポッシブルか!」と思いましたっけ(笑)。

 当時、たしか私は45歳。17年ぶりに、本格的な専門店に復活です。1週間ほどかけて引き継ぎをしまして、「よし、今日から独り立ちだ」となった、まさにその日に、BSE(狂牛病)騒動がどんと起きまして、いきなり売り上げが半分になってしまいます。

ランチは大健闘、でも夜は「し~ん」と…

 試練がまたまたやってきました。このBSEは強烈でした。

 とにかく、すこしでも売り上げを戻さねばなりません。それには、焼き肉店ですが、「牛」の存在感を減らすことだと考え、「牛から豚」「韓国料理」と「季節感」に活路を求めます。

 ランチはうまく行きました。いろいろ考えて、石焼きビビンパと、豚カルビ(ロース)、トントロ(肩肉)のセットを作ったんです。石焼きビビンパは、まずは普通に混ぜて食べるんですけど、半分くらいになったら、そこにスープを入れてクッパにする。石が熱を持っていますから、入れると「じゅわーっ」となって、非常にさっぱりと食べられる。

 何かに似ている? 実はこれ、大好きな「鰻のひつまぶし」からヒントを得ました。二つの味を楽しめます。特に女性に大受けでした。一方で、ディナーは失敗しました。韓国料理の側面を打ち出そうと「チョンゴル鍋」、いろいろな野菜や魚介や豚肉を入れた鍋を提供したのですが、これが全然盛り上がらない。どうしちゃったの、というくらい静かな店になってしまったんです。