おかげさまで、この運動を始めてからお客様のサービスへの評価がとても良くなっているんです。てんやは、商品は褒められることが多い。天ぷら、天丼がおいしいのが第一だし、磨き上げていかねばなりませんが、一方でサービスは、あまりにも個人の能力任せだった。それがクレームにつながることも正直あります。「これこれのことを頼んだら、つっけんどんに『できません』といわれた」とか。冷たく、短い言葉で対応するのも、ひとつの個性ではあるし、鯔背(いなせ)に聞こえることもあるでしょう。だけど「あしらわれた」と思われることもある。

 で、あれば、商品だけじゃなくって、てんやが元々持っている原石としての、「お客様を大事にしたい、笑顔にしたい」という気持ちを、みんなのテーマにしていきたい、ということなんですよね。もちろん、自然に笑顔が出てくるには、現場が疲弊していたり、無理な仕事を抱え込んでいては無理で、そこはまさしく経営側の責任だと自覚しています。

 ええ、こういうことを「建前だ」と感じる方がいらっしゃるのも分かっています。こういう考え方は、接客業、わけても外食ならではかもしれませんね。逆に、ご同業の方にはおそらく頷いていただけると思います。

 お客様の反応がいい、明るい顔になった、やっていることが、ちょっと大げさですが社会を明るくする、と思える。こういうのは、「誰かに目の前で喜んでもらえる」という、外食で働く人ならではの感じ方。そういう部分はある。でも一方で、体験すれば、人間なら、誰でも分かってもらえる感覚だと思うんです。だって、人が喜んでいるのを見て悲しい、という文化は、成り立たないでしょう? これについては日本人かどうかを問わず、人って、ベーシックなところはいっしょなのではと思います。

やりがいと楽しさの輪を広げよう

 そんなふうに考えている私は、典型的な、朝から「今日も一日頑張るぞ」タイプです。そうですねえ、夜の一杯を飲んでいるときは、一瞬、仕事は消えるけれど、朝方に見る夢から仕事が始まっています。最近は流行らないみたいですけど、生活と仕事の境目、あまりないと思います。

 起きてご飯食べて電車の中から、ずっと頭が回っていて、会社に来た時点で、けっこう「全開」です。浅草のオフィスに入って、自分の席に着くまでに、建築、国内、海外、開発と通り過ぎる度に各部門に声を掛けまくって「あ、これやけど…」と確認したり指示したりしています。会社ではよく「タイムイズブレッド!」と言ってます。「焼きたてのパンはおいしいやろ? 冷めても、まあOK、食べられる。でも3日経ったら固い。1週間経ったら、もうカビが生える。『おいしい』ものが、タイミングを外すと毒になってしまう」というわけです。

 フードサービスの仕事が大好きで、目の前でお客様に喜んでもらえる仕事に就いたことで、一生懸命やったら、成果が出て、お客様が喜ぶ、評価してくれる。もちろん仕事ですから山あり谷ありの連続ですけれど、働いていてやりがいもあるし、楽しいし、その輪を自分の周りに広げていきたい、と、今日も思っています。

 有り難いことに、てんやには、てんやが大好きな多くの仲間がいます。てんやの夢(ビジョン)は、日本の天ぷら文化の素晴らしさを世界に広げていくことです。てんや愛に満ちた多くの仲間と伴にこれからも日本のてんやから、世界のてんやにその輪を広げていきます。大事なことはその夢に向かって「一生懸命」やることです。その夢の実現に向けて今日も皆で美味しい天ぷらを揚げていきます。

 ちょっと元気になりたかったら、てんやにおいでください。ご一緒に、笑顔の花を咲かせましょう。笑は商で勝なり。ご愛読、ありがとうございました。

【おわり】