料理は、つまるところTT管理、TimeとTemperature、時間と温度の管理です。てんやのオートフライヤーも、「最適の温度で決められた時間で正確に揚げる」ことを基本に作られています。それがてんやの味の基本になる。コックさんがフライパンを振るのも、結局は時間と温度を決めていて、出来映えをそれに合わせているんです。

 三人組が温度や時間をやたら計測したことで、素人臭いところが見えてしまうのは、まったくかまいません。だって、天ぷら職人は、一人前になるのに15年、20年をかけるのです。1個1個、素材によって温度が違う、時間が違うことを覚えて、自分の身体に刻み込んだ技術でその差を吸収し、おいしく揚げる。我々がそれができる「ふり」をするのは失礼というものでしょう。しかし、その代わりに我々にはノウハウをつぎ込んだフライヤーがある。

 あ、誤解されたくないので詳しく言いますが、フライヤーがあれば誰でもすぐできる、というわけではありませんよ。フライヤーは揚げてくれますが、その前に粉(バッター)を付けたり、ボウルで混ぜるのも細かいノウハウがありまして、それはやはり人による職人的な技術だと思います。そして、以前も申し上げましたが、こうした過程の温度管理の手間をなくすために、チェーン店ならではの資材や設備投資も行っています。

 うちでは穴子はオートフライヤーで揚げます。でも、コンベアに入れるとどのネタも同じ時間揚げて出てくるので、臭みを取り、カリッと揚げるためにコンベアの手前のところで時間をかけています。仕様は基本的に海老に合わせているんです。では、揚がりやすいものはどうするかと言いますと、厚みで調整します。素材の厚さを変えて、フライヤーで最適になるように調整しているわけです。ですので、かき揚げは実は大変なのですよ(笑)。

 時間と温度を正しく管理し、そこに愛情を注げば老舗のご主人にかなり迫った料理ができる、と、改めて意を強くした出来事でした。

サイエンスは強い。では、カルチャーは?

 オートフライヤーは、我々のようなフードサービスの本質みたいなところがあると思います。時間と温度でちゃんと制御することを中核に置き、それがきちんと機能するように調理環境全体を整える。それを人が愛情を持って使いこなすことで美味しい天ぷら・天丼が出来上がる。まさに人とシステムの調和がてんやの強みです。これは、ある意味、個人店ではなく「会社」だからこそできる強みかもしれません。

 もともとてんやは、サイエンスの部分は強いと思います。きちっと前工程、調理、後工程が論理的に組み立てられています。前工程で言えば、食材が全部、オートフライヤーで規定時間揚げられると一番おいしい状態に加工されて、ジャストインタイム。必要なモノが必要なだけ、届く形になっています。揚がったら、保温するヒートランプがあって、ご飯をふんわり盛りつけるメカがあって、タレがすぐかけられるようになっていて、と、ムダがない流れができている。てんやの調理部門はサイエンスと人のバランスの上に支えられているのです。

 では、カルチャーは何でしょうか。例えば「盛りつけ」がそうです。