先日、この連載に出てもらった三人組(「『海老なしの天丼って、あり? なし?』てんやの商品開発会議は言いたい放題」に登場、先代のマーケティング・商品部部長の高橋一志さん、現・マーケティング・商品部の髙橋宏彰部長、マーケティング・商品部の小竹さん)がチャレンジしました。

 これは我々にとってなかなか難題です。てんやの天ぷらはご存じの通り、オートフライヤーで揚げている。しかし、今回はこれを使用するわけにはいきません。そこで、3人は老舗に数回食事に行ったり、トレーニングセンター(トレセン)に籠もって特訓しました。

 天ぷらの中でも、特に難しいのは穴子です。揚げる油の温度は高温で、天ぷら用では最も高い温度。揚げ時間も普通のネタより長く、穴子は6分。皮と身の間に臭みがあるので、高温かつ時間をかけることでこれを抜き、からっと仕上げます。

 一方、同じどんぶりに盛る野菜のほうは低温で2分弱で揚がります。ひとつのどんぶりの中に、ネタによって揚げ方を変えたものが並ぶわけです。揚げる方は、ひとつのボウルの中で、泡の様子を見ながら粉と水を調整して衣の濃度を変えます。そして、揚がる音の具合で温度が適正かを判断する。まず野菜から油に入れて先に揚げて、ぐっと温度が上がったところでタイミングを見て穴子をいれる。ネタを入れれば温度が下がりますから、高温を保つのも大変です。

ストップウォッチ片手に揚げる三人組は情けない?

 我々は、普段はオートフライヤーを使いますから通常の天ぷら用の鍋で練習をしてもなかなかうまく行きません。うまいお店で、カウンターで穴子を注文しますと、おやじさんが揚げたての長い穴子を、菜箸でぽんっと割ってくれたりしますよね。叩いただけで見事にぱりんと真っ二つにして「うちのは、きっちり揚げてますよ」とデモンストレーションするわけです。さあ、三人組のはどうかというと、やってみたら「ぼてっ」。

 「だめだこりゃ」「ああ、温度がちゃんと上がっていなかったんだ」「かりっといかなかったね」と口々に反省して、「わかった。やっぱり徹底的に温度と時間の管理だ」となりまして、温度計で油温を管理し、ネタにも差し込んで、ストップウォッチを読み上げて、わいのわいのと叫びあって、それでもどうやら納得のいく揚がり具合になりました。

 名人、巨匠となればこういった計測のアシストなんてまったく不要でしょうし、普通のお店でもそうでしょう。日々の経験値でだいたいなんとかなる。では、天ぷらチェーンの社員なのに、温度計とストップウォッチを振り回す我ら三人組は情けないのか、間違っているのか?

 もちろん、そんなことはありません。彼らが行ったのは、我々の仕事の胆(きも)、「サイエンス」の部分です。