青木:まず、その街でその国の料理をたくさん食べて、現地の量・味・値段の感覚を身につけないと、ということでしょうかね。人と食と文化を肌で感じることです。

用松:バンコクは、レストランから屋台まで、安くておいしいモノだらけだよね。日本円で100円くらいで楽しめるでしょう。

「なまず」をきっかけにバンコクに馴染む

青木:まさしくそうなんです。そのバンコクでてんやが現地に馴染むきっかけになったのが「なまず」でした。

用松:なまず。日本だとあまりなじみがないけど、アメリカ南部とかでよく食べられるよね。

青木:はい、現地では25~30グラムくらいの大きな、なまずの切り身を3枚くらいで、フィッシュアンドチップスで使うのがポピュラーです。

 なまずに目を向けたきっかけは、日本での「ワンコイン天丼」。こういう、「その国のキープライス」を見つけて、そこにずばっとはまるアイキャッチになる商品を作らないと市場に入れない、という気づきでした。

 いろいろな現地のメニューを試していて、まず、値段は2桁じゃないとダメだと。「100」を越えては売れない。で、79バーツ(日本円で300円弱)で出せる天ぷら、ということで、なまずの天丼を出したら、数字も客数もぐっと上がった。ここからいろいろトライしまして、場所によって異なるのですが、アイキャッチとなる商品価格の目安は35~50バーツが屋台。50~80バーツまでがフードコート。100~120バーツくらいがレストラン、と見えてきました。79バーツはどんぴしゃだったわけです。

用松:なまずの天ぷらは、匠の高橋さん(開発3人衆の1人、先代のマーケティング・商品部部長の高橋一志氏。前回参照)が苦労していたよね。

青木:はい、最初はステーキみたいに分厚いなまずの切り身が届いて、オートフライヤーで揚げても中まで熱がきちんと通らない。現地の人は、「いや、生でもいいよ、おいしいよ」と言うんですが。「せめて“天ぷら”という言葉は守ろうよ」と、薄い切り身にして、中までからっと揚げています。

 前回も開発三人衆が語っていましたけれど、現地に合わせて広げる、緩める部分と、変えてはいけない部分の見極めが難しいし、工夫のしがいがありますね。海外の場合は、丼タレと天ぷら粉はてんやのオリジナルのまま使っています。天ぷら粉は、日本で仕入れている先の工場が実はタイにもあって、「歯脆い(はもろい)」と言いますか、くちどけがいい。ここは崩せない。

用松:油はどう?

青木:国によって仕入れられるものが違いまして、タイ、インドネシアではパームオイルを使っています。ちょっと残念なところではありますが、その中でもべたつきの無い軽い油を選んでいます。現地の人には高評価ですね。フィリピンはキャノーラ油です(国内とは異なります)。