青木:はい、なので、子供たちが喜ぶ外食サービスが大繁盛しています。現地チェーンのジョリビー(Jollibee)は特に凄い。ハンバーガーやフライドチキンがメインなんですが、米食主体の現地のメニューとの組み合わせが上手いんです。フライドチキン、コーヒー、それにご飯のセットが人気だったりします。

用松:主食の9割強が米食だといいますね。日本はパン食が上回って、米より小麦を食べる国になりましたけど。

青木:国民の8割以上がキリスト教で、プレゼントが大好き。人口の約1割、1000万人が海外で稼いで年3兆円の仕送りがあり、それを貯めずに使う。消費パワーを感じます。子供が多いこともあり、育児やシングルマザーに寛容で、女性の社会的な立場も強い。

マネジメントに感じる女性パワー

用松:アジアは女性がマネジメントに参加している国が多いですよね。

青木:ええ、ASEAN諸国では、商品や人事部門は、女性がトップのことが多いです。てんやは3カ国にフランチャイズで出店していて、それぞれ規模が違うんですが、タイでパートナーになっているセントラルレストラングループは、タイで一二を争う大企業で、レストラン運営会社は約800店を運営しています。

用松:どちらがフランチャイジーかザーが分からないね(笑)。

青木:こちらのゼネラルマネージャーが女性で、今は異動された二番手の方も女性でした。インドネシアも商品開発系の役員は女性ですし、フィリピンもオペレーション部門の役員は女性です。女性が外に働きに出やすい国になっているように思います。その分、男性がのんびりしているかもしれません。

用松:それは、会社経営にも反映されているのかな。

青木:個人的な印象ですが、海外の女性マネージャーは、ずばっと本題に入りますね。主張は激しいですが、儲けだけとは言えません。本音で、厳しく言ってくる。男性の方が、立場とか考えながら「まあそうはいっても」という、バッファを作ってくる感じがします。

用松:なるほど。

青木:それと、日本では「とにかく食べてくれ。食べてくれれば分かる」とつい考えるじゃないですか。自分もそうでした。しかし海外では「まず、どうしたら店にお客様が入るか」を考える。マーケティングに凄く力を入れています。「お客様が入らなかったら、味が良くても分からないだろう?」と。本音のやりとりになりますが、それはそれで面白いし、お客様の立場に立つのは、女性の方がうまいと感じます。

用松:仰るとおりですね。そういえば、青木さん、英語がずいぶんうまくなったよね。

青木:最初はまったくしゃべれなかったことを考えれば(笑)。でも、タイ、インドネシア、フィリピン、ぜんぶ言葉が違うので今でも大変ですよ。必死で覚えていますけれど。

用松:青木さんはてんやのプロパーで、店長もやったし、教育マニュアルの整備もやっていた、ということもあるけれど、何より困難に立ち向かって、大変でもなんとか凌いでくれるだろうという期待がありました。

青木:サッカー馬鹿ですから。とはいえ、「これ、どうしたらいいんだ」と、眠れない夜がありました(笑)。

タイの1号店開店の時は「もうだめだ」と思った

用松:一番きつかった思い出はなんですか?

青木:英語がアレなので、契約関係は親会社が担当し、私は店舗運営に関わることをやっているのですが、幸い、誰かに騙された、といったことはないんです。本当にゼロ。でも、「これはまいった」と思ったことは何度かあります。一番きつかったのは、やっぱりタイの1号店開店の時かな。お店がロス(廃棄)の山になったんです。タイには強烈なプロモーションの慣習がありまして、「buy 1 get 1 free(バイ・ワン・ゲット・ワン・フリー)」という。

用松:あ、「1つ買ったら、もう1つおまけ」だな。

青木:そうです。「タイでの新店開業ではこれをやるのが定例だ」と、フランチャイジーの方から強く要望されて、もともと、大手チェーンのフランチャイジーをいくつも経験している会社さんなので、システムもしっかりしているし、大丈夫かと判断してやってみたのですが、これが大混乱になりました。

 注文の取り間違い、聞き間違いにシステムエラーが重なって、何が正しくて何が間違っているのか、まったく分からなくなり、作る商品の半分以上が「注文と違う」と戻ってくる。しかもそれがbuy 1 get 1 freeで倍になるわけです。

用松:なんと…。

青木:システムがいかにちゃんとしていても、オペレーションが追いつかなければ結局ダメで。人海戦術で突破するつもりが、かえってミスを拡大してしまいました。当時はてんや人生17年目で、お店でのたいがいのトラブルはなんとかリカバーできる自信があったのですが、このとき初めて「これはお手上げだ」と。どうにもなりませんでした。2号店を出すときにはやめてもらいました(笑)。この経験もあって、マニュアルや教育にはひときわ力を入れるようになりましたが。

用松:そうした苦労を経て、4年間の海外展開で学んだことを挙げてもらうとしたら、何が最初に来ますか。