小竹:はい、言われれば言われるほど燃えます。社長からは「面白いものを考えてくれ。そして、結果としておいしくなければいけない」と常々言われていますので、これを一番念頭に置いてます。開発は面白いのですが、天丼として当たり前のものではないので、おいしくするのは難しいんです。髙橋部長に言われて、何度も作り直して、数年がかりのものもあります。

 けれど、妥協して、「これでいいでしょう、こんなものですよね」と出すと、必ず叱られます。ハンバーグ天丼でも「これじゃハンバーグと呼べない」と叱られました。妥協するとすぐに分かってしまうんですよね。おいしいか、おいしくないか、で。

髙橋:あれは大変そうだった。

小竹:牛タンもそうですね。一昨年から始めたところ、まず肉の厚さが難しい。2.5ミリでは薄くて「食べた!」という気がしない。3.5ミリだとかみ切れない。微妙な食感が必要で、3ミリにしたんですが、それでもご年配の方から「かみ切れない」「スジがある」とお叱りをいただいて、急遽、カットする場所を変えました。舌の先から6センチまでは固いので使わないことにしていたんですが、それを8センチくらいまでにしたんです。

髙橋:豚キムチも苦労したな…。

:ありましたね。

用松:「ピリ辛キムチロース豚天丼」ね。2014年だったっけ。

小竹:3年前の夏、豚天丼をやろう、やるなら第一弾、第二弾、第三弾で味を変えたら面白い、と自分の中で盛り上がって、まずしょうが焼き天丼がスタンダードな第一弾。これは「こんなに喜ばれるとは」と驚くほどヒットしました。ところが第二弾からちょっとやりすぎまして。「次は豚キムチだ!」と、キムチを載せた。最後にソース豚天丼。そうしたらキムチからがくっと売れ行きが下がりまして、ソースでとどめになりました。

用松:何がいけなかったの?

肉系の新商品は面白いけれど悪戦苦闘!

小竹:キムチはお客様によって好き嫌いがはっきりする商品でした。第三弾のソース豚天丼は、通常は丼たれ(てんやの天丼のたれ)の上にそれぞれのソースを掛けるのですが、今ひとつ合わないのでソースだけにしました。これが「てんやらしくない味」になったのではと思います。

髙橋:キムチ自体はおいしかったんです。

用松:そうそう。もと焼き肉店の支配人としては(詳しくはこちら)、ここはどうしても韓国産の唐辛子を使わないと、と、私も頑張りました(笑)。韓国産の唐辛子は辛いだけでなく、甘味がありまろやかでおいしんです。

髙橋:ところが、隣で定番の天丼を召し上がっているお客様から「キムチの匂いがするのはちょっと気分的に合わない」と声があがったりしました。天ぷらってやっぱり繊細なんですよ。

小竹:そうなんです。やはり、常識に囚われない発想をした上で、「ここまで」という境界線は、持っていないといけないんだなと。お馴染みのお客様がメニューを見て「何だこれは?」と思われるくらいはいいけれど、お食事の気分を害しては「デッドボール」なんですよね。そして、てんやの天丼は「丼たれ」でできていることもよく分かりました。その上に何を掛けても、丼たれを使っていればそれは「てんや」の天丼として成立するんです。

用松:去年は肉系を7回、季節の天丼を8回刷新しましたが、今年はサイクルを早めて、10回にします。旬の鮮度をもっと出したいんで。お客様が「次に来たら違う天丼が」という循環にしていきたいです。

髙橋:おかげで大変な思いをしています。

用松:私は簡単なんです。8を10にしろと言うだけですから(笑)。