高橋一志さん(以下、匠):モッツァレラチーズの天ぷら、王位が本当に長いですよね。登場してすぐに定番になったはずです。

用松:そもそも、モッツァレラチーズの天ぷらをどういう発想で開発したのですか?

:実は随分以前にチーズを使おうというアイデアが先にあって、最初はもうちょっとこじゃれた感じの小鉢に、細かく裂いて盛りつけて100円ちょっとで出したんですが、これが全然売れない。

用松:天ぷらじゃなかったということですね。

:そうです。別のチーズで天ぷらにもトライしたんですが、フライヤー(揚げ機)の中で溶けちゃいました。もっとワイルドでダイナミックな方がおつまみ向きか、と思って改めて考えていたら、モッツァレラチーズにたどり着き、揚げてみたらこちらは溶けない。溶けずに伸びる。これは面白い、と。

用松:そうだった、それで「メニューに、千切れずに伸びている写真を載せよう!」ってことになって。あれ、僕のアイデアだったよね(笑)。

:そうでした(笑)。あれが良かったんですかね。正直、どうしてここまで人気なのか、結論はまだ出ていません。

強力な居酒屋系刺客が続々返り討ちに

用松:モッツァレラを越えられないのは大きな課題だよね。今年はどうですか。

:はい、次回こそは…やっぱり難しいかな。

用松:おいおい…(笑)。

:これまで、違う種類のチーズも出しましたし、男性の大好きな魚肉ソーセージ、ポテトサラダ、餃子、枝豆と幾多の挑戦者を送り込みましたが、何を出してもモッツァレラチーズの天ぷらに返り討ちです。

用松:魚肉ソーセージはけっこうこだわったんだよね。

:そうなんです。四国の有名なメーカーさんにご協力をいただいて、皮を剥いておいしそうにカットして揚げてみたんですが、完敗でした。ちくわも相当やりました。チーズちくわとか、いかにもお酒を飲む方に受けそうなんですが、ダメなんです。

用松:お客様の需要自体が居酒屋と違うからかな。

:そうですね。一般的な居酒屋さんのヒット商品とはあきらかに傾向が異なります。ボリューム感は求められませんし、ハイテンションで次々注文するお店でもありませんから、おつまみも違うものが求められるのでしょうね。

用松:続いて、現・マーケティング・商品部の髙橋宏彰部長。うまくいかなかった新商品に、何か共通点って思いつく?

髙橋:そうですね…私も匠も社長も、うまくいくかどうか気にしないで、思いついたらとりあえず、何でも衣を付けてフライヤーに入れますからね。

用松:「いくら」も揚げたね。ちょうど去年の今頃、東北の三陸海岸食材巡りをして、とても美味しいいくらに出会って。「いくらの天ぷらにしよう」とトライしたのだよね。

髙橋:ところが、揚がってくると中身が抜けて、塩気しか残らない。当然、没になりました。ああ、変わったところでは生キャラメルも一応揚げました。これも香りしか残らなかった。