この頃まで、てんやでは外国人クルーには、基本的に接客メインの仕事はしてもらっていませんでした。お客様と直接接することがない、カウンターの内側での調理補助や洗い場の仕事を中心に、補助的な接客をやってもらう程度だったのです。

 そこには「やはり、いくらトレーニングしたからといって、年配のお客様も多いてんやでの接客は難しいだろう」という、我々の側の思い込みがありました。

 しかし、人手不足からくるクレームの山に直面した店長は、思い切って考え方を変えました。「クルーに応募してくる外国人は、ほとんどが語学留学生の若い世代で、日本に関心があり、向上心も強い。調理や接客は苦手だろうと勝手に忖度せずに、しっかり一人前になるまで育てていこう」と。

「我々をどんどん鍛えて欲しい」

 まず最初は、中国と韓国からの留学生でした。店長がこの話をして、今後は接客もやってもらいたいと伝えたところ、2人は大喜びで「いままでは、ちゃんと戦力扱いされていない気持ちがあった。一人前のスタッフとして成長し、評価してもらえる機会をもらえて光栄だ。どんどん鍛えて欲しい」という嬉しい反応が返ってきたのです。

 果たして、店長がみっちり指導したことで彼らの接客スキルは急上昇しました。そして、留学生のつながりで、「ここはやりがいのある仕事ができる」と聞いた優秀な学生さんたちがクルーに募集してくれるようになり、戦力がさらにアップ。人員不足が急速に解消され、サービスの向上によってお客様の満足度、回転率が改善、と、好循環に繋がっていったのでした。

 まさに力石先生が教えて下さったように、従業員の満足度向上(それは、決して給与だけではなく、安心して働きたい、信頼されたい、協力して欲しい、学びたいが叶えられることでももたらされます)、が、業績にダイレクトに結びついたのです。

 この2人のクルーには直接店長会議に来てもらい、話を聞きました。「私たちは成長したいんです。もっと働く仲間の役に立ちたいんです。“アルバイトの外国人だから…”と十把一絡げに決めつけないで下さい」と言われて、本当に我ながら目から鱗がぼろんぼろん落ちましたね。まいりました。後に親会社(ロイヤルホールディングス)からも認められ、上野店の店長はロイヤルグループの社長賞を受賞しました。

 そこがてんやのターニングポイントになりました。さっそく「上野店に続こう!」となるわけですが、ここで「外国人クルーに、日本人の慣習を知ってもらう」だけではダメなことに気づくわけです。

 上野店の店長が言うには「むしろ、教える側の我々が、彼らの考え方を知る方が重要です」。教えるのは数式や定義ではなくて、サービス、文化です。「この国の人にこう言ったら、果たしてどう受け止めるだろうか」を、教える側が予習して、ちゃんと納得して貰えるように、準備しておかねばなりません。

「人の集まり」が「チーム」になるには

 そこで、これまでの「日本人を知ろう」ガイドに加えて、現場でクルーの教育に当たる店長向けに、応募する人が多い国の国民性や文化を知って貰うハンドブックを作り、店長会議等で勉強していきました。例えば、我々から見れば時間にルーズな人に見えても、そもそも「スケジュール帳」という概念そのものがない国もあります。「9時」と言われたら「だいたい9時ごろ」と考える国もあります。それを知って教えるのと知らないのとでは、お互いの気持ちに大きな違いが生まれます。

 もうひとつ、まだ日本語で十分なコミュニケーションができない外国人クルーには「若葉マーク」を付けて貰うことにしました。不十分なトレーニングで店に出すのはけしからん、というご意見もおありかとは思いますが、現場で育てることでしか身につかないこともございます。このマークを付けた店員がご注文の際に「ゆっくりお願いします」と、お願いすることもあるかと思いますが、もし可能でしたら、応じていただけますと幸いです。

 ダイバーシティって難しいなあ、と思う一方で、こうしていろいろな国の人、あるいは、様々な年代の人(性別はもちろんです)が重なっていくことで、強い組織になっていけるのではないかと思っています。

 あっ、話がちょっと飛びましたか(笑)。単純にいろいろな人がいるだけでは、強い組織にはなりません。むしろまとまりが悪くなるだけかな。だとしたら、人の集まりがチームになっていくのに必要なのは、いったい何でしょうか。