最近、外国人従業員の採用を通してそれを実感しました。

 てんやは、もともと外国人のパート、アルバイト(クルー)の採用にそれほど熱心ではありませんでした。2年ほど前から方針を変更し、現在は直営店のクルー、約3300人のうち、425人、13%ほどが外国人になっています。

 単純に採用を増やすだけでは、店舗での教育負担が増します。そこで、本部でもオリエンテーションを行うなどサポートしていますが、最初は外国人クルーに「日本の慣習を理解して貰うことが重要だ」と考えていました。

 たとえば、お客様から「オーダーと違う」と言われたとします。そこで、仮にミスがなかったという確信があっても、我々日本人はいったんは「それは申し訳ございません」と引き取ります。言った言わないの話になることを避けようとしますよね。それが良い、悪いとか、「てんやでは必ず、店の方が謝るんだな」ということではないですよ。長い歴史で培われた国民性として、まずは衝突を避ける方向にお互いに行こうとするし、お客様も、自然とそういう対応を予想していると思います。

わずか1年で、クレーム一番店が激変

 そんな文化の国で、「オーダーと違う」と店員に言ったところ「いえ、違いません。あなたの注文通りですよ」と返されたら、言い方によってはおそらくほとんどの方が不愉快になるでしょう。そういうすれ違いを避けるために「日本では、お客様からご意見があった時にはこうするんですよ」と、教育することが大事だと考えたわけです。日本の文化、慣習を一刻も早く体得して、戦力になって貰おう、と。

 ところが、「どうもこれは考え方が逆だったぞ」と思うようになりました。
 それに気づいたのが、てんやの東京・台東区の上野店での出来事です。

 2014年、上野店はてんやの中で「もっとも苦情が多い店」という、不名誉な記録を持っていました。お客様がたいへん多くいらっしゃる店で、それゆえに接客で細かいミスが発生しがちだったのです。端的に言えば人手不足によるゆゆしき事態ですが、そうはいってもなかなか、優秀な人の採用は難しい…。

 ところが、2015年。
 事態は激変しました。

 なんと、全店一多かったはずのお客様からのクレームは、ほぼゼロに。その一方で売上は前年比で10%もアップ。定番商品のワンコイン天丼が出数の半分近くを占めるてんやにとって、この上がりっぷりはとんでもない数字です。優秀なパート・アルバイトが続々と上野店に加入してくれたおかげですが、なのに採用コストもゼロでした。

 非常識なまでの「上野店の再生」を起こしたのは、現場の主役である店長の意識改革でした。