診療報酬制度は、もう制度的に持たない

高齢者優遇を是正するために、若い世代、子供への再分配を強化しようという、小泉進次郎氏らの提言(参考:「小泉進次郎氏らが激論!高齢者優遇は行き過ぎだ)も、グランドデザインという意味では物足りないと。

津川:若い世代への再分配を何とかしてやろうというのは、悪くないと思います。ただ、どこかから財源を取ってきて、若い世代にばら撒くということだけではなく、もう少し構造的にどう直すのかという議論を深めるべき時期が来ていると思います。特に、医療費の問題については、抜本的な改革が不可欠でしょう。

 日本の医療費の問題は、基本的には診療報酬制度にあります。2年に一度、診療報酬を上げ下げするというのは、国民皆保険制度が始まった時から、ずっと続けてきているわけです。当初は、それなりに上手くいっていたのですが、もう、制度的に持たなくなっているのではないかと私は考えています。

 過去、診療報酬を使い過ぎたところを、懲罰的に下げるということを、基本的に繰り返してきています。しかし、下げるとどうなるかというと、病院はあまり利幅が大きくないので、何らかほかのサービスを増やそうとするわけです。コンピューター断層撮影装置(CT)の診療報酬が下がったら、その代わりに磁気共鳴画像装置(MRI)を増やそうとか、どうにか失った収益を穴埋めしようとします。

 こうしたことを繰り返していて、結果的に、日本は世界で一番、MRIとCTが多い国になり、外来の件数や入院日数も米国の2~3倍、ベッド数も病院数も多いのです。分かりやすく言えば、医療サービスの単価が非常に低く、薄利多売によって経営を成り立たせている状態だと考えられます。

 例えば、外来(再診)は1人700円くらいしかもらえないのですが、血液検査をすると数千円もらえるわけです。外来をやること自体の経済合理性を持たせようとしたら、山ほど患者を診てたくさん検査をしなければならなくなります。血液検査を毎回しないと、経営上、患者を診れば診るほど赤字になってしまいます。

 米国では6カ月に1回、病院に来てもらえばいいものを、日本では毎月来てもらうとか、来てもらうだけだと赤字だから、検査もしています。糖尿病では毎月コレストロールを調べる必要はないのに、毎月調べる。患者さんも、それでしっかり診てもらっているという気になるから、嬉しく思う。患者さんが腰が痛いと言ったら、比較的簡単にMRIを撮ります。患者さんの自己負担割合も低いので、お金の面でもブレーキがかからない。要するに、構造的に歪んでしまっている。これ以上、この制度を続けても、どうしようもないところまで来てしまっているんです。

 この制度を続ける以上、どんどん医療費が持たなくなって、また診療報酬を下げることになる。そうなると、薄利多売がさらに進む。そして現場の医師や看護師は忙しいと悲鳴を上げるようになる。これ以上、医療サービスの供給量を増やせなくなるところまで行き着いたら、病院が潰れていく。外来も、検査も、もうこれ以上増やせなくなり、それでも赤字だったら、もう、潰れるしかありません。

 

 つまり、診療報酬制度そのものを見直すしかないと私は考えています。それには専門家がエビデンスをベースに、数年かけてじっくりと解を見出していかなければならないと思います。