中身に関して。シルバー民主主義への言及に批判はありましたか。

高木:今回は、世代間を超えていかに社会的に納得して方向感を作るかというのがコンセプトで、例えば「子供に投資しましょう」というのはおじいちゃんでも30代でも、賛成できる。その財源は?となると各論が出てくるし、それはこれからやらなきゃいけなくなるんだろうけど、まずは方向感を作りたかった。

上田:「財源の付け替えのように見えている」という批判はありました。でも本来は付け替えというより、個人が好きなことをやれば世の中ダイナミックになるよね、という前提で、子供とか教育は少なくとも明らかにカバーされてないので、そこだけはみんなで何とかやりましょうよという共通認識が、世代問わずあるんじゃないでしょうかというストーリーが前提にあります。

 なので「高齢者を延々と働かせて財政を取り上げようとしているんじゃないか」というような直球の批判は、今はないですね。

両氏は「世代間対立にはまらない議論を」と訴えかける(写真:的野弘路)
両氏は「世代間対立にはまらない議論を」と訴えかける(写真:的野弘路)

高木:財源がないのだから、負の再分配をやらないといけないわけじゃないですか。高齢者の医療を剝がすというのは大きな痛みになりますけど、制度全体で見たらこの瞬間の現役世代だって、割を食っているわけで。

 ただ、そこに陥ると解は限りなく難しいというか、世代間対立にはまると。じゃあ一票の重みを変えるかとかになる。そこはもう一個レイヤーの違う議論、議論はちゃんとしたほうがいいけど、そういう構図に陥ると建設的にみんなの意見がなかなか出てこなくなります。

上田:財源について、「ここから剝がしましょう」という議論は省内でもちらちらありました。「こう剝がして、ここに付けるのが必要なんじゃないか」といった指摘が。でも、それをやると議論にならなくなるし、典型的な世代間対立になる。それだとまとまらないから、それとは違う価値観を我々が示さなければいけないんだと思います。

そういう風にしないと高齢者が頑なになりますね。

高木:シルバー民主主義って、選挙したら(若いほうが)負けるわけだから。その構図に持っていた瞬間に負けになるじゃないですか。若手が負けるというより社会全体として負けだと思う。みんなでこういう社会を実現していくんだということであれば、世代を問わずコミットしてもらえるアジェンダをいかに作るか、というほうが、より建設的な議論になります。

 実際、具体的な施策に落とし込むと結局(どこかから財源を)剝がさないといけない、という批判はある。結局剝がさなければいけないとおっしゃる人はいるし、認識している。でもまずは、みんなで世代問わず合意できるアジェンダを作りましょうよ、ということです。

これからこの議論をたたき台にどうしていくのですか。

上田:地方の方が見えている世界は全然違うという批判はあります。地方の世界はこの中でまったく検討されていないのでその通りです。今回のペーパーをベースに、今後地方だったり、若手以外だったりいろんな人たちとの議論を深めていきたいと思います。

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