高木:役所の資料としての熟度が低いというのは確かにそうですね。役所の資料というのは、「書いたからにはやる」というのが普通。民間もそうでしょうが、その意識は強い。その観点から見ると、不十分な資料だと理解できます。

ただ、僕がバカなのかもしれないけど、社会的にある程度みんなで討議できる議論のレベルって、これくらいがいいあんばいなんじゃないかと、ある種思っています。この先の議論となると、社会保障はこうで、教育の制度はこうなっていて、とかなりテクニカルになります。
そういうレイヤーに最終的に持っていかなければいけないけど、まずこういう課題がある、という方向感について納得するための議論、と考えれば、これくらいのざっくりとした方向感で、この瞬間は合っていたんじゃないかと思っています。
結論がないことへの批判
文書の中には政策提言がありませんね。「結論がなければ意味がない」「結論から逃げている」といった批判が最も多いようです。
上田:当初公開しようとした文書には、結論が書いてあったんです。でも「産業構造を変えるべき」「技術開発」「民間サービスの振興」というような、いかにも、来年度予算で経産省が要求できるようなことだけだった。幹部から「いまできることを並べても意味はない」と指摘され、もっともだと思って削りました。
高木:大きな方向性は、3つ出しています。
- 一律に年齢で「高齢者=弱者」とみなす社会保障をやめ、働ける限り貢献する社会へ
- 子どもや教育への投資を財政における最優先課題に
- 「公」の課題をすべて官が担うのではなく、意欲と能力ある個人が担い手に
高木:この3つの課題は経産省だけでも、霞が関だけでも解決できない。自分ができることは何かと持ち寄らないと、議論が進まないんじゃないかと思います。
この軸を基にした政策は、これから作っていけばいいと一義的には思っています。仮に僕らが考える結論をこのペーパーの中に並べても、甘いのかもしれないが、限られた人が限られたフレームのなかで結論を出すことになる。それに必ずしも、国の制度を変えれば解決できるような課題でもない。
高木:だけど民間では既にこうした課題を解決する提案が出てきている。それをまとめたページも作りました。
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