インセンティブがほしい、と。

細野:ちょうどその話をしていたら、別の高齢者が横から話に入ってきて「俺も年金を辞退するから、老人用のファストパスをくれ」とおっしゃるんです。ディズニーランドなどで並ばなくても施設に入れるファストパスがありますよね。あれをあらゆる施設で使えるようにしてほしいというのです。

 その人が言ったことは、高齢者の心理をズバリ言い当てていると思いました。老人は、金はあるけど時間がない。だから待つのが嫌なんだと。病院で待つのも嫌だ。美術館に行っても、落語に行っても、うまいレストランに行っても、必ず混むから行列ができる。老人は先が短いのだから、ある意味で人生のファストパスを与えてほしいというのです。

 だから年金の受給を辞退する見返りとして、「実利派」と「名誉派」みたいに選べるようにする。そういう意識が社会に広まることは良いことではないでしょうか。もちろん、経済的に厳しい方が、年金をもらうのが申し訳ないと感じるようではいかんのですよ。それは社会が、しっかりとサポートしないといけません。

「こども保険」より「子供国債」の方が筋はいい

子育て世代を支援するために、小泉進次郞氏ら自民党の若手議員が「こども保険」の創設を訴えています。

細野:そういう議論が出てくるのはいいと思うんです。やり方はいろいろありますよ、良い、悪いはあるんだけど。私は、筋がいいのは、どちらかというと子供国債の方じゃないかとは思っているんですけどね。

 高齢者で、自分は貯金がたくさんあるから、子供国債なら買ってもいいよという人はいるかもしれない。もしくは若い世代の保育料とか、奨学金とかなら出していいよという人はいるかもしれませんよね。でも、そのときは、利子はなくても相続税については少し優遇するとか、いろんな方法論があると思います。

前回の参院選挙から選挙権の年齢が18歳以上に引き下げられましたが、若い世代の投票率はそれほど上がっていません。要因は何だと考えますか。

細野:自分たちに光が当たるという感覚がないのかもしれない。有権者が動くことで政治が動くって1つの理想の形なんだけど、やっぱり我々(議員)はプロなんだから、これを仕事としているわけだから、我々の側から問い掛けるべきじゃないかと思いますけどね。若い世代に対しても、高齢者に対しても、こういうことを今、政治がやろうとしていると、そのためにぜひ力を貸していただきたいと。それをまだまだあんまりやれていない。「投票率が低い」というのは、私は政治家の言うべきことじゃないと思いますけどね。

このままシルバー民主主義が是正されないと、若い世代の鬱憤が爆発してしまうんじゃないでしょうか。極端な話をすれば、世代間の対立が高まり「老人は早く死ね」みたいな危険な機運が醸成されてしまうのではないか、と。

細野:まあ、私はそこまでいかないと考えていますけど。この問題って、世代によってものすごくギャップがある。

 我々(40代)の世代は高齢者の負担に対して、まだ若干理解があるんですよ。なぜかというと自分の親の世代なんですね。私の親の場合、70代の後半ですけど、その世代がまさにこれからだから、自分が多少苦労しても支えていかなくちゃと理解できる。

 でも今の20代とか、30代って親も50代、60代です。だから、親世代も経済的に苦しい。自分たちはこんなに苦労しているのに、なんで高齢者を支えなきゃならないんだという理由の説明がつかないんですね。そういう世代がこれから、確実に増えてくる。

 なので議論の土台としては、世代間の社会保障の収支のバランスがどうなっているのかというのを直視した方がいいと思うんですね。所得の移転が世代間でどれくらいなされているのかを、包み隠さずきちっと表に出す。その上で、この負担をどう均等にしていきますかと議論することは必要でしょう。