冒頭、シルバー民主主義という話もありました。世代間の不公平感があったとしても、いざ選挙となると大票田である高齢者層におもねりたくなるというのが政治家の心情ではないですか。

世代ごとの人口(2015年国勢調査)と2016年参院選の投票率

細野:確かに数だけを見ると、今の60代から70代の人口は今の10代とか20代の倍近くいますよね。投票率も倍近くあるので、単純計算すると4倍影響力がある。その人たちから嫌われたら政治家を続けるのは結構きついだろうなと、直感的には思いますね。

 でも私は、有権者は今、政治家のうそを見抜くと思っています。「教育も充実させます」「高齢者の福祉も充実します」などと全部を言うような政治家は信用されませんよ。

年金の受給を辞退したら「死ぬ前に天皇陛下に会いたい」

財源はどうするんだ、となりますから。

細野:必ずなる。私はむしろ高齢者の皆さんにこの憲法の問題もそうなんだけど、教育とか子育てがいかに日本にとって大事なのか、そのことが社会全体の緊急課題なんだということをきちっと伝えた方がいいと思っています。

 ただ、負担の在り方みたいなものはちょっと注意が必要で、やっぱりこれまでの社会保障というのは権利とされてきたところがある。例えば若いときに年金保険料をたくさん払った人は、たくさん年金をもらえるわけですよ。これは権利だからそうなんだけど、年金というのはそういう意味では格差の是正には機能していないわけです。格差がそのまま反映される形になっている。そこの考え方を変える必要があるのではないでしょうか。

 つまり、社会保障というのは人生の保険的な機能なんだと。人生で努力して成功した人は本当におめでとうございますと。そういった方々には申し訳ないけど、やっぱりそれは保険としてはリスクが顕在化しなかったわけだから、少し我慢していただくと。一方で、頑張ったけれども厳しい老後を迎えている方については、きちっとサポートしていくという、その辺の発想の転換も必要だと思います。

子育て世代、若者への社会保障を厚くする分、高齢者の側もこれまで権利と思われてきたものを少し削る、もしくは放棄してもらう。そういう考えが必要になってくる、と。

細野:そうですね。ちょっと数字を調べてみると、65歳以上の高齢者で総資産が1億円以上の世帯がちょうど10%。4000万円以上の金融資産を持っている世帯が16%あります。これだけ裕福な高齢者がいる一方で、年金の受給を辞退している人は全国で800人ちょっとです(編集部注:日本年金機構によると厚生年金保険・国民年金の年金受給権者からの申し出によって、年金給付の支給停止件数は859件。2016年11月末現在)。

 お金を十分に持っているおじいちゃん、おばあちゃんさえも、貧乏な若者が支えている。極論を言えば、そうなります。

 私はここ数年、例えば地元のロータリークラブなど経済的に成功した方が集まるところで、「皆さん、年金を辞退してもらう可能性はありますか」と尋ねています。そもそも、年金を辞退できる制度そのものが知られていないというのはありますが、ものすごく冷ややかな雰囲気が漂うわけですよ。

「お前、なに言っているんだ?」と。

細野:そうそう。「俺はここまで頑張ってきたんだから年金をもらうのは当たり前だ」という雰囲気になるんです。ただ、講演が終わった後、懇親会とかで話をしていると、何人かが声を掛けてきて、「自分は財産が結構あるし、もう80歳だから、別に年金は要らないんだ」と打ち明けてくれる方もいます。

 実際、銀行口座に年金が振り込まれていても「1円も下ろしていない」という人は結構いて、そういう人が90代で亡くなると70代が相続する。要するに、上の世代だけでお金がグルグルと回っている。

 年金受給を辞退してくれる人がどうしたら増えるかという話をしていたら、ある年配の方は「天皇陛下に会いたい」と言うんですよ。死ぬ前に陛下に会いたいと。これは非常に興味深い指摘ではないでしょうか。文化勲章をもらうような偉い人でなくても、一般の自分でもお国に貢献したことを認めてほしいということでしょう。

 もちろん、叙勲の対象者があまりに大勢となると陛下のご負担になりますから、やり方はいろいろと考えなければならないでしょう。だけど、そういう名誉をしっかり差し上げることで年金の受給を辞退していただけるなら、社会にとってはものすごくいいことじゃないですか。