細野:親の所得が低いので高等教育を受けられない子供がいる。こうした状況を何とか変えていかなければなりません。うちの事務所を手伝っている若者で、東大の数学科に進学した子がいます。実は彼の実家は、生活保護を受けている家庭だったんです。

 生活保護家庭というのは、その世帯としては子供を大学にやっちゃいけないんですよ。なぜかというと、世帯に生活保護費が出ているんだから、18歳になったら働いてくださいというルールになっている。でも高校を出て、それで働いて得られる所得と、能力のある子が大学に進学して、社会的に活躍したときに得られる所得は全然違う。納税額にしてもかなり増えることになる。

高卒者より大卒者の方が生涯賃金は多いことはデータでも示されています。つまり高等教育を受ければ1人当たりの納税額は増えるし、結婚の時期や子供の数とかも全然変わってくるはずですよね。それって、今の日本の課題である少子化対策につながります。

細野:そうなんですよ。生活保護家庭でも、世帯分離すれば子が大学に行けるんですけど、世帯分離すると親の生活保護費が減るんですね。例えば子が1年生の間だけでも生活保護家庭の中で大学に行かせれば、2年目ぐらいからアルバイトをしたり、お金を貯めたりできるようになる可能性は高い。

 その額は月に約6万円、年間で70万円なんですよ。わずかその金額、生活保護費をけちることによって、そういう子供が成長する、自立するチャンスを摘んでしまっているんじゃないかと。結局、それが貧困の連鎖につながっていることもあるので。

子供の教育は社会が責任を持つ

細野さんは教育の無償化に強い思い入れを感じるのですが、何か理由があるんですか。

細野:私は普通の中流家庭で育ったんですけど、大学の3年生のときに父親が会社を辞めまして。会社の方がだいぶ人を減らした際に、父親も思うところがあって退職しました。

 それで大学4年生のとき、大学の学費を無料にしてもらったんです。それはすごくありがたくて、ちょうど4年生の卒業の直前に阪神・淡路大震災があったんですよ。そのときにいろいろ自分で思うところがあって、2カ月間、現地にボランティアに励みました。それがきっかけで社会にも関心を持つようになったし、ひいては政治家になることにもつながったんです。

 なぜボランティアに行ったかというと、やっぱり「社会にチャンスをもらっている」という意識が強かったからです。同じように「自分はただで大学に行かせてもらえた」と多くの若者が思ってくれれば、成長したら今度は自分が社会に貢献する番だと思ってもらえるんじゃないか。教育というのはそういうものだと思うんですよね。

なるほど。恩を感じれば、社会に恩返ししたいという思いが出てくるということですか。

細野:そうだと思うんですね。先ほど話した東大の学生は、貧しい家庭の子供を対象に無料で勉強を教えています。自分と同じように貧しい環境の子供にチャンスを与えたいと思っているんですね。そのような好循環を少しでも起こすためにも、子供の教育は社会が責任を持った方がいい。それが、私の人生論です。

細野さんは議員になった頃からずっと、「人生前半の社会保障を充実しなきゃいけない」ということを一貫して訴えてきました。

細野:そうですね。ただ、始めは結構風当たりが強かった。街頭演説とかでそういう話をすると、反発はかなり厳しかったんですよ。何でかなと思って尋ねてみると、当時(2000年頃)の高齢者って昭和の一桁とか、場合によっては大正生まれの方が結構いらっしゃった。

 戦中、戦前世代ですから、その世代の人って若いときに塗炭の苦しみを経験されて、戦後も苦労して、ようやくちょっと落ち着いてきたという頃です。それが現在の70代だとちょうど私の親世代と重なり、大半は団塊の世代となる。この世代も苦労している時期はあるんですが、戦後は生活がわりと豊かになって、高度成長期も経験できた。要するに、非常に順風な人生を送っている人も多いんです。

 その世代が高齢者のマジョリティーになってきたことで、同じことを言っても受け止められ方が全然変わってきた。彼らは自分たちよりも子供の世代が貧しいことを知っているんです。ましてや孫の教育には非常に強い関心がある。だから自分たちが財を成したり、社会的地位を築いたりとなれば、それを還元しようという雰囲気が出てきたというのを、ここ数年、非常に強く感じますね。

 今の60代から70代ぐらいの皆さんは比較的豊かで、まだまだ元気です。人生100年の時代に入ってきたからこそ、その世代の皆さんにどうやって負担をしていただくか。若い世代に恩恵を及ぼすことができるように、ここ数年間が1つの大きな分かれ道だと思いますね。