藤原:国家財政が逼迫されるような事態は避けなければならないですが、医療や介護といった社会保障費については、むしろ心身ともに健康な高齢者が増えれば、そうしたコストが減るというメリットも大きいです。実際にいくつか実験的な施策で効果が上がっている事例もある。そうした社会設計を本格的に導入していくべきでしょう。

団塊の世代はまだ、「老人」ではない

団塊の世代が全て75歳以上の「後期高齢者」になる「2025年問題」も議論されています。藤原先生はどのように考えておられますか。

藤原:「老人=団塊の世代」というイメージは強いですが、僕に言わせると、まだ老人ではないですよね。以前ある民間の老人ホームに取材に行く機会があったのですが、そこで感じたのは「老人というのは社会の中で見えないところにいる人たちだ」ということだったのです。

 つまり、街中を出歩かない、百貨店などで色々な買い物をしない、部屋に閉じこもって一日中過ごしている。そういう人たちですよね。団塊の世代については、まだ多くの人々はそうではないですよね。消費の担い手でもあるし、産業の世界でバリバリ働いている人も中にはいる。社会の中で目に見えるところで活動しているわけですよね。

 それでは、あと5年、10年経った時にどうなるでしょうか。団塊の世代が後期高齢者になり、老人ホームに入居する。体が弱り、身動きが取りづらくなる。そうして街の中から、社会の中で老人の姿が見えなくなる。そうした時には医療費や介護費はとんでもない額に膨れ上がるでしょう。その社会的コストは本当に深刻になると思います。

そうした問題を控えている今、我々はどのように高齢者と向き合うべきなのでしょうか。

藤原:個人の立場では、まず高齢者とはどのようなものであるのかをきちんと理解し、接するということが大切でしょうね。例えばコミュニケーション力が落ちている、人付き合いが下手になっていることを想像して向き合うということです。

 それから、行政や企業の側も、施設のバリアフリーなどハード面だけではなく、ソフト面をどのように充実させていくかが重要でしょう。過剰に接客するということではなく、高齢化社会の中で、どうすれば高齢者とうまく接して、サービスを回していけるかを考える。それこそが今求められていることだと思います。