こども保険に対案を持ってきた人はいない

<b>村井英樹氏(36)</b><br />2003年東京大卒、財務省入省。12年衆院議員初当選、自民党副幹事長。埼玉県出身。
村井英樹氏(36)
2003年東京大卒、財務省入省。12年衆院議員初当選、自民党副幹事長。埼玉県出身。

村井:党内でも、政調会長に議論を引き取ってもらい、「人生100年時代の制度設計特命委員会」が設置されました。原則の転換を含めて議論する舞台装置は整いました。

小泉:我々の提案には、いろんな批判もありますよ。党内含めてね。だけど、例えばこども保険について、対案を持ってきた人は一人もいません。代表的な批判の一つは、子どもがいない人には不公平だと。しかし、実は我々のメッセージは、まさにそこにあるのです。

 消費税から逃げるなという批判もあります。これも大きい。だけど、この批判に対しては、逆に消費税に逃げるなともいえる。8%から10%に予定通り上がるのは2年後。仮に予定通り上がるとしても使い道はもう決まっています。消費税を財源に新しいことをやるには、10%以上の増税の議論をしなければいけない。それはいつ実現できるのか。少子化対策は待ったなしの状況で、悠長なことは言っていられません。

 こども保険も完璧ではないけれど、ほかに案があるのなら、どこから財源を持ってくるかも含め、実現可能な対案は示されるべきです。

 社会保障の担い手は、将来保険料を支払うことになる、子どもたちです。今、社会保障全体の持続性が危機的な状況の中で、子どもがいる、いないに関係なく、子育てを社会全体で応援する社会を作ろうというメッセージを訴えているのです。しかも、それを主張している僕も小林さんも子供がいないというね。

改革に残された時間は少ない

人口が多く、投票率も高い高齢者の声は、民主主義の中で必然的に大きくなります。それでも、「高齢者優遇」を是正していけるのでしょうか。

小泉:僕は一概に悲観していません。確かに20代の投票率は低いですが、10代では19歳より18歳のほうが高い。高校で主権者教育をやった成果でしょう。今の投票率は60~70代が高くて20代が一番低いのですが、将来、これが逆転するのも夢ではないかもしれません。

世代ごとの人口(2015年国勢調査)と2016年参院選の投票率
世代ごとの人口(2015年国勢調査)と2016年参院選の投票率
出所:総務省

小泉:3月下旬に地元で、ゼロ歳から参加できる活動報告会というのをやったんです。赤ちゃんが泣いてもいい、子どもが走り回ってもいい。政治を身近にしたいから、演説会に来てみませんか、と。塗り絵とかベビーカー置き場を用意して、来場した800人のうち1割が子どもでした。

 ずっと塗り絵をやっていた女の子が、最後お母さんと帰るとき、「あー塗り絵楽しかった。また来よ」と言っていて、大成功だと思いました。きっとその子は進次郎のことも政治のことも覚えてないけど、いつかテレビで僕を見たときに、「塗り絵楽しかった時の人が、なんで?」と思って政治に興味をもつこともあると思う。

 ただ、改革に残された時間はあまりありません。25年にすべての団塊の世代が、後期高齢者になりますから。こうした状況で、全世代型の社会保障にかじを切るには、相当な努力と覚悟が必要です。

 僕らはもう子供にはなりませんが、誰もが高齢者になるのです。この自然の摂理が、シルバー民主主義の底流に流れています。高齢者になったとき、誰もがいい思いをしたい。しかし、その給付を支えるのは子供の世代です。世代間で支えあっていることを、理解しないといけません。

村井:今回こども保険や社会保障改革を若手メンバーで打ち出した時、高齢者からどういう反応が返ってくるだろうという恐怖感はありました。それでも「俺はこうしなければいけないと思う」と覚悟をもって訴えれば、有権者の考え方を変えられると信じるしかありません。小泉さんを中心に様々な政治家が説明をしてくれる中で、これならいけるかもしれないという確信に近いものを感じています。

小林:だから、地元の盆踊りや公民館を回って、「人生100年の時代が来ますよ」「こども保険やらなきゃダメなんです」と、説得しているんです。高齢者にも協力したい気持ちは確実にあります。

小泉:逆説的だけどね。僕は高齢者を信じたい。シルバー民主主義というのは、シルバーに耳障りのいいことを言うことではなくて、本当はシルバーの人たちに覚悟をもって真正面からぶつかっていくことなんだと思う。結局は、シルバー世代のことを、若者世代が信じられるのかどうかなのかもしれない。この日本が、保育園の建設に反対するような高齢者ばっかりだったら悲しいでしょう。

■変更履歴
記事掲載当初、本文中で「少子高齢化が進んで高度成長期とは違う世界に入った間」としていましたが、「少子高齢化が進んで高度成長期とは違う世界に入った時」に修正します。本文は修正済みです [2017/05/15 18:00] 記事掲載当初、本文中の図の説明で「教育国際」としていましたが、「教育国債」に修正します。本文は修正済みです [2017/06/21 10:25]