「全世代型」社会保障の概念

<b>小泉進次郎氏(36)</b><br />2004年関東学院大学卒、米国戦略国際問題研究所(CSIS)研究員を経て09年衆院議員初当選、自民党農林部会長。神奈川県出身
小泉進次郎氏(36)
2004年関東学院大学卒、米国戦略国際問題研究所(CSIS)研究員を経て09年衆院議員初当選、自民党農林部会長。神奈川県出身

小泉:現役世代の社会保険料を上乗せするこども保険を提言したとき、「0.1%は負担だ」という批判がありました。ですが、毎月約15%を給与から天引きされている社会保険料は、大部分が年金、医療、介護向けで、実際に使うのは高齢者が多い。子供向けの0.1%を負担だと感じるのは、高齢者には4000億円は出せるが子供向けには財源がない、という思考回路と同じです。高齢者優遇が染みついてしまい、頭の中が「全世代型」社会保障になっていない。

村井:こども保険に関する議論が、世代間の不公平を是正するための枠組みを構築するきっかけになると期待しています。仮にこども保険を導入しても、まだ圧倒的に高齢者向けの仕組みであることに変わりはありません。こういう実態を若者世代を含めて共有し、議論してほしいのです。

こども保険で社会保障の議論が活性化
●「こども保険」と「教育国債」「子ども国債」の違い
こども保険で社会保障の議論が活性化<br />●「こども保険」と「教育国債」「子ども国債」の違い

これまでも政治は高齢者優遇の社会保障にメスを入れようとし、何度も跳ね返されてきました。

小泉:農林部会長として農政改革を進めた経験でいうと、農業のように利害関係者が一部の分野や業界に限定できる改革と、社会保障改革は次元が全く違います。社会保障改革は、すべての国民と向き合わなければなりません。これは国民の皆さんにもメディアの皆さんにもしっかり認識してほしいことです。

 こども保険にも賛否がありますが、賛否がないところには何も生まれませんので、議論が巻き起こるのはいいことですよ。こども保険を提言する前の子育て支援や教育無償化の議論は、「国債対国債」でした。自民党は「教育国債」と言い、民進党は「子ども国債」だと訴えている。何でしょうね、このガチンコ勝負は(笑)。こんな議論をしていても、建設的な議論はできませんよ。実際こども保険を提案したことで、政治の景色は一変しました。

大学の無償化には反対

教育の無償化には賛成ですか、反対ですか。

小泉:誰もがタダで大学に行ける社会がいいとは思いません。もちろん学ぶ意欲があるのに、家庭や金銭の理由でチャンスをつかめないなら、そこはちゃんと支援する必要がある。給付型の奨学金はそのためです。

 仮に高等教育を無償化するなら、無償化する価値のある教育にしなければいけない。つまり大学改革が不可欠です。子供は減るけど大学は増える。仮に、そのオーバーユニバーシティ状態のなかで国債を突っ込んで無償化するというのは、ただの大学の温存。全く理解されないでしょう。

小林:そもそも大学の無償化の考え方は、「大学に行くのが英雄」、という第一創業期の時代の考えです。そうではなくて、個人の生き方があって、高校に進まずに職人など専門的なスキルを身に付けるという選択肢もある、本人側に選択権があるというのが第二創業期の考え方です。

年金をもらわなくてもいい人がもらえる制度が悪い

村井:若者世代を応援することが自分たちにもプラスで、自分たちも社会の仕組みにお世話になって今がある、ということを高齢者にわかってもらう必要があります。年金が受給できるのは、将来の働き手である子どもたちが負担を背負ってくれるからでしょう。その仕組みに思い至らない人が増えたのは、受益ばかりを強調し、国民としての負担の必要性や重要性を訴えてこなかった政治の責任です。

小泉:僕も政治に責任があると思う。経団連や経済同友会の会員企業の役員には、年金をもらわなくても大丈夫な人がたくさんいる。もらっている人が悪いのではなく、そういう人がもらえてしまう制度になっていることが悪い。

 だから今回の提言には、富裕層が年金を辞退するインセンティブになる制度を導入してはどうかとも書きました。こうしたアイデアは恐らく、これまで全く議論されてきませんでしたが、検討に値すると思っています。

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