目的はシンプルだった、「声」と「活舌」を元通りにする

 当然、リハビリが必要だった。

 足のリハビリは理学療法、手のリハビリは作業療法、そして言葉を話すことのリハビリは言語聴覚療法と呼ばれる。理学療法と作業療法はトレーニングジムを思い起こさせるようなリハビリルームで行われるし、リハビリの中身は「運動」である。スタッフ自身も体育会系的な人が多い。対照的に言語(聴覚)療法は文系的だ。リハビリも個室で行われる。言語療法士と患者は机を挟んで向かい合って座りながらの作業になる。失語症など高次脳機能障害も言語療法士がカバーするから、その守備範囲は広く、高い専門性が要求される分野である。

 幸い私の場合はスムースに話せない事だけが問題だったから、言語療法に於ける目的はシンプルだった。大きな声ではっきりと話せるようになる。「声」と「活舌」を元通りにすることだ。

急性期病院から転院してリハビリと格闘した初台リハビリテーション病院(東京都渋谷区)。

口を大きく開けて舌を真っ直ぐに突き出す

 初台リハビリテーション病院に入院当初、言語療法のリハビリにはいくつかのルーティーンがあった。初めに行うのは首のストレッチ。首を前後左右にゆっくり動かしたり、回したりする。

 それが終わると舌の運動だ。鏡を見ながら、口を大きく開けて舌を真っ直ぐに突き出す。左寄りにならないよう意識してやる。

 次に舌の上下運動だ。鼻の下を舐めるように上方向に動かしたら、逆に顎(あご)に向かって舌を大きく反らせる。これを10回やったら、左右の運動をする。口を半開きにして舌先が唇の両端に触れるよう反復運動させる。これも10回。

 最後に舌で大きく円を描くように回す。時計回り、反時計回り5回ずつ。

 一見するとここまでは準備運動のような印象を与えるかもしれないが、準備運動などでは断じてない。これらの舌の運動はスムースに話すための重要なリハビリなのだ。