MRI検査、強く要望してようやく実施

 脳梗塞が発症したとはいえ、一番の気がかりが解決したことで、私は心から安堵して、13日を終えることができた。しかし翌14日(土)になっても病状はあまり変わらず、治療効果は何も実感できなかった。私が疑問に感じたのは、担当の脳神経外科医たちがいっこうにMRI(磁気共鳴画像装置)検査をしようとしなかったことだ。脳梗塞の発生部位やその広がりを正確に知ることなしに、効果的な治療ができるのだろうか。その疑問に対する担当医の返事に私は全く納得がいかなかった。

 「MRI検査を行っても行わなくても、やること(治療)は一緒ですから」

 本当か? 定型の薬剤費を点滴で流し込むだけだから、MRIをしてもしなくても結果は同じだといっている。私はこの安直な返事に反発し、MRI検査をするよう強く主張し、翌15日(日)に検査が行われた。だがこの15日の夜から右半身の麻痺が急速に悪化していったのである。 16日(月)には右手、右脚はまったく動かなくなった。

私が疑問に感じたのは、救急病院の医師がいっこうにMRI(磁気共鳴画像装置)検査をしようとしなかったことだ。 (画像:PIXTA)

 17日(火)、私に伝えられたMRI検査結果は驚くべきものだった。

 「血栓は小さなものでしたが、脳内の細い血管が枝分かれしていく分岐点で梗塞が起こってしまったために、症状が悪化しているが、使えるだけの薬は使っている。今、薬を変更するか検討しているところだ」

 その晩から点滴の薬が変わったが、症状は改善するどころかさらに悪化していった。点滴治療すると脳が腫れ、疲労感がでてくるため、妻の記録によれば私は18日(水)、19日(木)頃には昼間でも眠っていることが多かったようだ。実際、このあたりの記憶はかなり不鮮明で、19日にはシンガポールに駐在している息子が見舞いに来てくれたのだが、何を話したのかさっぱり覚えていない。ここがどん底だったのだろう。

 発症から8日目、21日(土)には点滴もようやく外れ、担当医の言葉を借りれば「症状は安定」した。要するに落ちるところまで落ちて、これ以上症状が悪化することはないということだ。

信頼できる病院の「診察券」を持っておくべし

 果たしてこの病院の脳梗塞治療は妥当だったのか。入院中の発症なのたから、もっとできることがあったのではないか。 MRI検査のタイミングや薬の選択など、適切なものであったのか。バックヤードで医師たちが様々な検討して治療は行われたものだと信じたいが、正直、私には不信感しか残らなかった。

 つい先週まで取材だ、テレビだ、講演だと動き回っていた日々が、突然、右半身麻痺の寝たきりの日々へ暗転したのだから、誰だって絶望するだろう。だがこの病院への不信感は怒りとなり、その怒りがリハビリに対する強い執着へとつながっていったのである。

 脳梗塞はたしかに時間との戦いだが、病院も選ばなくてはいけないというのが私の教訓だ。しかし脳梗塞になり、救急搬送される際、果たして病院を選ぶなんてことができるのだろうか。

 じつはできる。大きな力になってくれるのが「診察券」だ。「診察券」はその病院に通院したことがあり、病院にはその人のカルテがあり、緊急時の疾患との直接的な因果関係はなかったとしても、予備知識のまったくないに患者よりもはるかに受け入れやすいからだ。日頃、日本の中高年は多忙を理由に病院を避けがちだが、本当に調子の悪いときには、会社を休んででも信頼のできる、いざという時に自分の身を預けたいと思える病院に行き「診察券」を獲得しておくべきだ。

次回に続く)