早期発見にもかかわらず、入院中に病状が悪化

 脳梗塞は脳に酸素や栄養素を送る動脈が詰まって起こる病気であり、時間の経過とともに、脳神経がダメージを受け、最終的には死滅する。そうなる前に詰まった血のかたまり(血栓)を溶かす薬剤を点滴で投与するのが基本だ。同時に脳を保護する薬なども点滴されるが、何れにしても脳梗塞は時間との戦いである。

 発症から3時間以内であれば「t‐PA治療(血栓溶解療法)」と呼ばれる強力に血栓を溶かす薬を使用した点滴治療も可能である。だがこの薬は脳出血を誘発してしまう副作用もあり、かなり厳格に時間管理が行われている。

 では私はどんな状況にあったのか。

 残念ながら私には「t‐PA治療」は行われなかった。入院中の脳梗塞発症にもかかわらずだ。おそらく発症が就寝中だったために、発症時間の特定ができなかったからではないだろうか。

 後日、知ることになるが、就寝中でも患者を起こし、4時間おきに看護師が手、足、口の動きなどをチェックする病院もある。これなら発症時間が一定の時間内で特定できるから、いざという時に「t‐PA治療」を施すことができる。だが私が搬送された急性期病院(救急病院)ではそのようなチェックはまったく行なっていなかったから、ごく一般的な脳梗塞の点滴治療が13日の朝から始まった。

 しかしこの時点では麻痺の程度も軽いうえに、意識は非常にクリアーであった。

 13日の朝7:30、真っ先に妻に急変を伝えたが、講演会とTVの対談番組を何とかしなければという思いでいっぱいだった。テレビについてはプロデューサーにお任せできたが、御殿場の講演会はいかんともしがたかった。講師が体調を崩し、そのピンチヒッターを依頼されたことは過去に何度かあったが、講演会当日の穴埋めを頼まれた経験は一度もない。まさに非常事態であったが、主催者であった地域金融機関のご厚意により、私の事務所の副代表である内田裕子を代役として受け入れてもらうことができた。