(写真:Martin Dimitrov/Getty Images)

 だが血栓を作り出す元になった病気の多くは、生活習慣病である。飲酒、喫煙だけではなく、糖尿病やストレスフルな生活がもたらす不整脈など、生活全般から見直さなければいけない。最初の脳梗塞で運よく軽微な後遺症で済んだ人は、時間が経過すると、何事もなかったかのように元の生活パターンに戻ってしまう。それが一番良くないというのである。たしかに血栓を作り出す元を絶たずに、血液をサラサラにする薬だけに頼って再発を防ごうというのは、どう考えてもリスキーだ。

 では私自身はどうか。

 じつはすでに再発を経験した。

 15年2月に脳梗塞を発症して6月上旬まで初台リハビリテーション病院に入院し、退院後はすぐに仕事を始めたが、自宅―仕事場―初台リハビリテーション病院(外来)を行ったり来たりしながら、また自宅での訪問リハビリも新たに始め、仕事とリハビリ半々の生活をしていた。

 再発リスクは認識してはいたものの、退院したばかりで、あらゆる注意ごとが頭にぎっしりと詰まった状態で、無理せず用心深い毎日を送っていた頃で、再発リスクなどまったく現実味のない話だった。

 ところが、15年12月の朝、初台リハビリテーション病院のリハビリに行くために、玄関のドアをあけた瞬間、右足の力が抜けた。

 「再発だ」

 瞬時に分かった。こんなにも早く起こってしまったことに愕然としたが、その一方でふつふつと怒りがこみあげてきて、全身がカッと熱くなった。3カ月間に及ぶリハビリ専門病院での訓練を経て、ようやく社会復帰を果たしたばかりだというのに、その努力がすべて徒労に終わり、またゼロからやり直すのかと思った瞬間、やり場のない怒りが突き上げてきたのだ。

 再発リスクに現実味はなかったのだが、じつは退院早々、いざという時の備えだけはしていた。

 2月に脳梗塞を発症した時の病院の治療に対して強烈な不信感を抱いていたからだ。

 119番通報して救急車を呼ぶだけでは運を天にまかせるようなもので、極論すれば博打と同じだ。病院を選択する自由はない。しかし今度何かあった時には、私は虎ノ門病院に搬送してもらうと私は決めていた。

 理由は十数年来、お世話になっている私の主治医との関係にある。青山にあるそのクリニックは「大学病院の医療水準を町医者感覚で提供する」というコンセプトで、いわばオープンイノベーション型クリニックである。

 東大医学部バスケットボール部キャプテンだった主治医がその仲間を中心に広げていったネットワークで品質の高い医療を提供している。MRIやCT検査は外部の専門機関と連携してやっている。