脳梗塞で手足が動かないというのは、運動神経をつかさどる脳細胞の壊死が原因だ。脳細胞からの指示が神経回路を伝わり手足の筋肉を動かすのが通常の姿だが、脳が司令塔としての機能を失ってしまったのだから、リハビリは真逆のことをやる。

 手足の末梢神経を刺激することで、逆に脳細胞を再教育していくプロセスが脳梗塞のリハビリなのである。感覚的に言うと「思い出す」ように仕向けていく地味な作業がリハビリであって、負荷をかけたジムの筋トレとはまったく異次元のトレーニングなのである。

 もちろん発症直後、急性期病院に数週間も入院していると、それだけで恐ろしいほど筋肉は衰えてしまう。その筋肉を鍛え直す必要はあるが、自分の身体の重さを利用するだけで充分であり、大きな負荷をかけた筋トレなどまったく必要がない。

違和感があった西城さんのリハビリ映像

 麻痺が相当解消されている人ならある程度の筋トレも意味をもつが、手足が不自由な段階では、逆に麻痺に伴う筋肉の拘縮を強くしてしまいかねない。私がお世話になっている高い技能を持ったリハビリの専門家もその西城さんのリハビリシーンを見て強い違和感を覚えたという。

 「野球に例えれば、大リーガーになることを夢見る小学生に、大リーガーとまったく同じ練習をさせるようなものだ」

 都合のいい部分だけを切りとって強調するテレビお得意の演出なのか、それとも西城さんが通っていたジムが特別なリハビリ理論をお持ちなのか。それは分からないが、いずれにしても一般的な脳梗塞のリハビリに対するミスリーディングな映像と言わざるをえない。

 脳梗塞の本当の恐ろしさは、再発率が非常に高いところにある。

 じつは脳梗塞は、その原因によっていくつかのタイプに分かれ、再発率もタイプによってかなり違う。タイプの話は別な機会に譲るとして、脳梗塞全体の再発率をみると、最初の発症から1年以内の再発率は7~20%、10年以内の再発率45~75%と言われている。

 75%という異様に高い再発率となっているのは心房細動(脈が速くなる不整脈)など心臓病を原因とする脳梗塞だ。大きな血栓ができやすく、それが脳の血管に詰まると、ダメージも大きく、重篤な後遺症が残るうえに、4人に3人が10年以内に再発するというのだから恐怖以外の何ものでもない。しかも再発すると、最初の脳梗塞時に残った後遺症に、新たな後遺症がプラスされる。

 西城さんはどうだったのか。

 私が詳細を知る由もないが、報道されている客観的な事実だけを振り返れば、最初の脳梗塞は2003年、48歳の時だ。水分を摂らずに頻繁にサウナに行っていたため、血液の粘度があがり血栓ができたとご本人は語っている。韓国のコンサートに行った先で発症したが、後遺症は比較的軽度なもので、ほどなくステージ活動も再開している。

 再発したのは8年後の2011年だ。