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急性期病院からリハビリ専門病院に転院、その後退院したが、脳梗塞との本当の闘いは退院後に待っていた(写真:PIXTA)

我が家が「苦痛」と「違和感」に満ちた環境に変貌した

「快気祝い」という習慣がある。

 病気が全快した時に、見舞いをしてくれた人々に贈り物などをしてお礼をすることだが、脳梗塞の場合は勝手が違う。 発症直後、急性期の病院に2週間ほど入院した後、ほとんどの患者はリハビリ専門病院に転院する。私も初台リハビリテーション病院で3カ月間入院し、2015年の6月に退院した。待ちに待った我が家に帰れる喜びと、厳しいリハビリをやりとげた達成感。天候にも恵まれ、新緑の季節の快晴のもと、晴れやかに私は退院した。

 ところが帰宅してみると、慣れ親しんだ我が家は、くつろぐどころか、とんでもない苦痛と違和感に満ちた環境へと変貌しまっていたのである。

 玄関の扉を開け、居間のソファに腰かけた瞬間から違和感が始まった。

 ソファは座面が低く、奥行きが広い。肘掛けのないソファを真ん中にして直角に組合せているから、ゴロリと寝転ぶこともできる。気分しだいでゆったり、のんびり、気ままに使えるはずなのに、私の身体はその形状についていけなくなっていたのだ。

 浅く座ったまま、背もたれに寄りかかると、身体が後ろに倒れ過ぎて不自然なうえ、半身麻痺が残った右側にずるりと傾いてしまう。姿勢をキープすることが出来ないのだ。ならば一度立ち上がって深く座りなおせばいいだけのことだが、それがまた一苦労なのだ。

「随分回復した」と思っていただけにショックだった

 3カ月間の厳しいリハビリ特訓で、身体の機能は随分回復したと思い込んでいたものだからショックだった。「歩く」「手を動かす」「話す」という機能に特化したリハビリに明け暮れているうちに、腹筋や背筋など身体全体の筋力がおそろしく低下していたのだ。仕方なく私は麻痺のない左手が使えるソファ左側の肘かけにくっつき、背もたれ側には大きめのクッションを2、3個置いて座ることになった。