2015年2月10日深夜、就寝前に歯を磨いていた私は、突然めまいを感じた。慌てて居間に戻り、ソファに座りこんだら、右腕がだらりとなって力が入らず、舌がもつれ、救急車で病院に運びこまれた。脳梗塞との闘いの始まりだった──。

 突然の脳梗塞発症から一年経った2016年2月、私は脳梗塞発症から現場復帰までの365日の記録を「帰還」という短期集中連載にまとめた。その時点での自分の体験や思いは書き切ったつもりだったが、やはり今から思えばまだ「帰還途上」であった。冷静になって今読み直してみると、先の見えぬ混沌の中で書いていたこともあり、この病気についてうまく伝え切れていない粗(あら)もあると感じた。

 その後も継続してリハビリに取り組み、私は社会復帰を果たしたが、その過程で脳梗塞という病気についての知見や経験も飛躍的に増えた。「帰還」執筆後の病気との戦いの経緯や、この病気を持つ人が健康な人と比べて何が違っているかということなどついて、改めて書いてみたいと思う。