子供扱いせず提案を吸い上げてくれた父

 考えてみると、ホワイトボードを使った発想法の根底にある「仲間と情報を共有し一緒に議論しながら考える」やり方は父・三憲が実践していたことです。父にとっての仲間は私たち家族でした。

 小さい頃から、私はしょっちゅう父に付き合い、パチンコ店や焼き肉屋の新店舗の候補地の検分に出かけていました。

 小学校5年生の時のことです。「泰蔵、ちょっとドライブば行くぞ」と言われて車に乗ると、建物を解体中の工事現場のようなところに連れて行かれました。

 父は「ここを借りて焼き肉屋を開店するかどうか悩んでいる」と言います。白地図を取り出し、「ここを国道が通ってて、ここには団地がある。人通りは結構多いけど、こことここにライバル店がある。泰蔵、どう思うか」と聞いてきます。

 子供心に「これはオヤジ、真剣に悩んでいるぞ。家の浮沈がかかっているから、しっかり考えなきゃいかん」と思ったものです。「団地があるから家族連れが多いばい。子供向けにいろんなサービスをしたらどう? ランチをタダにするとか」。父は「泰蔵、天才! それはいい!」と受けとめてくれました。

 その後、焼き肉屋をオープン。さすがにタダにはできませんでしたが、「お子様焼き肉ランチ」を100円という破格の値段で提供したり、メニューよりも高価なおもちゃをおまけにつけたりしていました。私の無邪気な提案も、決して子供扱いすることなく、吸い上げてくれたのです。

 仲間とリアルタイムで情報を共有し、ワイワイ自由に語り合う中で本質をつくアイデアをすくい取り実践する――。父のやり方は形を変え、いま確かに、私の中でイノベーションを創出する源になっているのです。