設立したばかりのスタートアップ企業(ベンチャー企業)への投資・育成を手がけるMistletoe(ミスルトウ)の孫泰蔵社長兼CEO(最高経営責任者)。アジアにシリコンバレーのようなエコシステムを形成し、日本に、そして世界にイノベーションを起こそうと情熱を注ぐ。

 起業家である父や兄の姿を幼い頃から見ていた泰蔵氏には「孫家秘伝」のアイデア発想法がごく自然な形で身についた。さらに、泰蔵氏自身も意識的にアレンジを加え、そのメソッドを拡張・発展させている。キーワードは「記憶フィルター」と「ホワイトボード」。仲間とのリアルタイムの情報シェアがイノベーションを創出するカギを握るという。

(前回はこちら

孫泰蔵氏のオフィスは壁がまるまるホワイトボードになっている(写真:菊池くらげ)

 前回、孫家秘伝のアイデア発想法を紹介しました。

 米国に留学中だった次兄の正義は、勉強に追われながらも少しでも家計を支える資金を得たいと、「1日に1個の発明」というノルマを自ら貸しました。加えて、発明に行き詰まった時には、コンスタントにアイデアを思いつくための方法論まで考え出してしまった。これらの話を、私は中学生になった時に正義本人から聞きました。

 これらの話は、多感な年頃だった私に大きな影響を及ぼしました。正義に触発され、その日から私も「1日1個は必ず新しいアイデアを考え出す」ことを習慣とするようになったほどです。

 今の、この習慣を継続しています。ただし、発明に限定してはいません。新しいアイデアの内容はいろいろです。新しいビジネスのタネを思いつくこともあれば、新しい料理のレシピを思いつくこともある。今、目の前にあるモノの新しい使い方を思いつくこともあります。

 「新しいビジネスモデルにつながる大きなアイデアを考える」などとハードルを上げてしまうと、プレッシャーになり何も考えたくなくなります。これでは継続するのは難しい。あえて「実現可能なアイデアであればなんでもいい」という気楽な気持ちで向き合うことにしています。

 大事なのは、「何か新しいアイデアはないかな」という視点を持って暮らすこと。それだけで、ものの見方、受け止め方、とらえ方が変わります。斬新なアイデアを生む素地ができると思います。