「発明するための方法論」を発明する

 このノルマを、初めのうちは難なくクリアしていました。しかし1カ月、2カ月とたつうち、15分考え続けても、何も思い浮かばない日が出るようになったそうです。当然ですね。

 後に、正義から私はこう尋ねられました。
「1日1個は必ず発明すると決めたのに何もアイデアが思い浮かばない日が出てきたんだ。そういう時にはどうしたらいいと思う?泰蔵だったらどうする?」
「何もできないよ。オレやったら発明をやめるね」
「それだからお前はアカンのや」

 希代の起業家・正義はこの苦境にあっても発明をやめることはしませんでした。発明に行き詰まったのを機に、「1日1個、コンスタントに発明できる方法論を発明する」という、一般人にはなかなか思いつかない方法を編み出したのです。

 正義が考えついた方法論とは、15分を5分ずつに分け、3つの発想法で発明するやり方です。具体的には1)問題解決型発想法、2)逆転発想法、3)複合連結法の3つ。順に説明していきましょう。

 まずは「問題解決型発想法」。誰でも日々、生活をしている中で、「困った」「問題だ」と気づくことがあります。それらをノートに書きとめ、毎日、繰り返しそのノートを眺めます。人間は日々、知らず知らずのうちにメディアや知人・友人から新しい情報をインプットしているもの。問題のタネを眺め続けているうちに、インプットした技術や方法が結びつき、解決案が浮かぶことがあります。これが第1の問題解決型発想法です。

 第2の「逆転発想法」は、世の中にあるものの逆を考えていく方法です。単語帳にランダムに名詞を書き込んでおきます。パッと開いてその単語を眺め、特性を逆転させて考えます。「冷蔵庫」という単語だったら「白い」「四角い」「大きい」「重い」「冷やす」といった特性が思い浮かびます。それらを逆にして、「黒い」「丸い」「小さい」「軽い」「温める」という特徴を持たせたらどうかと考える。これが逆転発想法です。

 3つの中で最も効果が高い方法が第3の「複合連結型発想法」でした。最初の10分間、問題解決型発想法、逆転発想法で考えて思いつかなくても、最後の5分間で複合連結法を使うとだいたいアイデアが出たそうです。

 ここでは単語帳を2冊使います。その2冊を同時にえいと開き、現れた単語を組み合わせて新しいアイデアを考えるのです。1冊目の単語帳に「時計」、2冊目の単語帳に「冷蔵庫」と出たら、「時計付き冷蔵庫」「冷蔵庫付き時計」の可能性を考えるという具合です。「これはいける!」という可能性のあるアイデアが出るまで続けます。

次ページ 複合連結型発想法で生み出した、あの自動翻訳機